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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

高齢者に多い神経難病 家族だけで頑張らず、早めに介護専門家に相談を

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パーキンソン病は60歳以上では100人に1人

高齢者に多い神経難病 家族だけで頑張らず、早めに介護専門家に相談を

 皆さんはパーキンソン病という病気をご存じでしょうか?

 一般にはあまり知られていませんが、高齢者には比較的多い病気です。全国に約15万人の患者がいますので、国民全体で平均すると、1000人のうち1.5人の割合になります。それが60歳以上になると100人に1人の割合になりますので、約7倍に増加しています。まさに高齢者の病気なのです。100人に1人がかかるのですから、高齢者にとっては決して人ごとではない病気と言えます。

 では、パーキンソン病がどんな病気か、簡単にご説明したいと思います。とは言え、私は医療の専門家ではありませんので、医学的知識を語るのではなく、介護の現場から見たパーキンソン病の特徴をお話しさせていただきます。

特徴的なちょこちょこ歩き 方向転換もしづらく

 介護関係者がパーキンソン病と聞くとすぐに思い出すのが、ちょこちょこ歩きです。パーキンソン病の特徴的症状の一つである無動によるものです。足が動かず、なかなか歩き出せません。歩き出してもすり足で小股になります。そのため、はたから見ると、足をすりながらちょこちょこ歩くように見えます。この特徴的な歩き方を見たら、介護関係者はすぐにパーキンソン病だとわかります。

 また、歩いていて止まりにくくなる、方向転換がしづらい、じっとしている時に体が震えだす、膝や指の筋肉が硬くなって動きにくくなる、などの症状も私たちがよく気付くものです。さらに病状が進むと、首が下がり、前傾姿勢になってきます。話すのも、飲み込むことも難しくなっていきます。

 またパーキンソン病の症状には、物忘れなどの認知症状やうつ症状、幻覚、妄想など、運動障害以外のものもあります。

歩行介助など専門の介護手法がある

 このようにパーキンソン病は、様々な症状があり、生活に大きな支障をきたします。しかし、パーキンソン病は現在、治療法が確立されておらず、難病に指定されています。一度パーキンソン病になってしまったら、一生病気とつきあっていかないといけないのです。

 介護の世界においてパーキンソン病の方に対する介護方法は、一つのジャンルになっています。大勢の介護従業者が、パーキンソン病の高齢者に出会ったことがあると思います。そしてパーキンソン病の高齢者を介護する際には、ちょこちょこ歩きにリズムを合わせて歩行介助するなど、パーキンソン病の症状を理解して介護する必要があります。そのように、パーキンソン病専門の介護手法があるのです。

 もし皆さんのご身内がパーキンソン病になってしまったら、頑張って家族だけで介護するのではなく、早めにケアマネジャーなど、介護の専門家に相談することを強くお勧めします。家族にとっても、本人にとっても、専門家のケアを受けることが大きな負担軽減につながります。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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