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大人の健康を考える「大人び」

医療・健康・介護のコラム

「健口」で健康(20)未来の歯科医療どうなる

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 このシリーズでは、予防歯科学が専門の大阪大歯学部教授、天野敦雄さんに聞きました。次回からは「脚の痛み」を特集します。(聞き手・佐々木栄)

「健口」で健康(20)未来の歯科医療どうなる

 科学技術の進歩は歯科医療にも大きな影響を与えています。日本歯科医学会が描く2040年の未来予想図をのぞいてみましょう。

 重度の歯周病を患うK太さん(50)。歯茎の炎症で歯がぐらつき、現在であれば抜歯になりますが、歯茎や骨の細胞に分化するiPS細胞(人工多能性幹細胞)などを注入し、健康な歯茎を取り戻しました。歯の結晶構造を強くして、むし歯になりにくくするため、歯の表面にはレーザーを照射。はめるだけできれいになる歯磨き用マウスピースを購入しました。

 小学1年のN美さん(6)は、近くの歯科医院で口内を調べると、悪玉の 歯垢しこう 細菌群が見つかりました。今であれば一度すみつくと追い出せない悪玉菌ですが、未来の歯科医は「殺菌した後、善玉菌に置き換えられます」と伝えました。予防歯科が浸透し、幼児期からむし歯や歯周病が起こりにくい口内環境づくりに取り組む人が増えていることでしょう。

 大きなむし歯の穴ができた大学1年のY樹さん(20)は、歯科医院に行くと、歯科医から「すぐ治せます。麻酔も不要です」と一言。レーザーでむし歯を固めた後、歯と一体化する詰め物をし、口を開けて待つこと5分。元の歯と詰め物の境目が分からないほど、きれいな仕上がりになりました。

 現在、むし歯予防と歯茎を守る方策は、セルフケアの徹底とかかりつけ歯科医を持つことに尽きますが、歯科医療に劇的な変化が起きるかもしれません。将来、恩恵を受けられるよう「健口」を守りましょう。今回で最終回ですが、連載を通じて、歯科医療を身近に感じてもらえたなら幸いです。

【略歴】
 天野 敦雄(あまの あつお)
 大阪大学歯学部教授。高知市出身。1984年、大阪大学歯学部卒業。ニューヨーク州立大学歯学部博士研究員、大阪大学歯学部付属病院講師などを経て、2000年、同大学教授。15年から今年3月まで歯学部長を務めた。専門は予防歯科学。市民向けの講演や執筆も多く、軽妙な語り口・文体が好評を得ている。

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