Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
金縛りになった、どうすれば…有効なのは「二度寝」?
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。
「明け方にふと目を覚ましたら、起きようとしても体が動かず、声も出せず、怖かった」。このような、いわゆる金縛りを経験した方も少なくないと思います。実はこれ、“普通”のレム睡眠で起こる現象ですので、心配いりません。
医学的には「睡眠麻痺」
金縛りは、医学的には「睡眠 麻痺 」と呼ばれます。麻痺とは、脳卒中や交通外傷などで神経に障害が起きることによって、主に手足の運動機能や感覚が失われることを指します。金縛りの場合も、手足や体幹、首の骨格筋(自分の意思で動かせる筋肉)に力が入らず、起き上がることはもちろん、寝返りや声を出すこともできなくなります。金縛りは決して珍しい現象ではありません。成人の30~40%が、少なくとも一度は経験していると言われています。
多くの場合、金縛りは短時間で終わります。人によっても違いますが、数秒間の短い金縛りから、時には数分続く長い金縛りもあります。数分も続くと、恐怖感から実際以上にとても長く感じることが多いようです。
脳卒中などによる麻痺と違い、金縛りの麻痺は後遺症もなく元通りに戻ります。それも当たり前で、実は金縛りの麻痺は、私たち全員が一晩に何度も経験している正常な“生理現象”だからです。ただ、その麻痺は眠っている間に生じるため、気づかないだけなのです。
運動神経の「オフスイッチ」
金縛りの時に見られる麻痺は、レム睡眠中に生じます。レム睡眠は、寝ついてから、約90分に一度の周期で繰り返し現れる「夢を見る睡眠」として知られています。睡眠時間が6~8時間であれば、一晩に3~5回のレム睡眠が出現します。
夢を見やすいことからも分かるように、レム睡眠中の脳は活発です。体の運動をつかさどる脳部位(運動野)も活発になっています。夢見の内容そのままに体が動いてしまっては危険だし、外敵から隠れてしっかりと休養を取るという睡眠の本来の目的も果たせません。そのため、レム睡眠中は骨格筋が動かないように、大脳と骨格筋を結ぶ運動神経の途中にある「オフスイッチ」が作動しています。これが金縛りで見られる麻痺のメカニズムです。レム睡眠が終わり、ノンレム睡眠になれば、オフスイッチが解除されます。ちなみに、このような理由から、私たちが睡眠中に寝返りをうてるのはノンレム睡眠中です。
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三島和夫先生の金縛りの解説納得しました。いわゆる眠り病という昼間の突然の眠り発作その場で五分も眠ればその後頭がさっぱりします。この現象と金縛りと何か関係あるか次回にそれにも触れていただきたく、よろしくお願いします。
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