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在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活

医療・健康・介護のコラム

「ホウレン草の○○和え」、あなたはいくつ作れますか?

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 東北にも短い夏がきています。いつもなら実家へ帰省して友人や親戚に再会し、大好きなビールで乾杯するのが恒例でしたが、今年はそれがかなわず、とても寂しい夏休みです。我が家では、人の集まる観光地へ遊びに行くのは断念。極力自宅で食事をし、市営のコートを借りて家族だけでテニスをするなど、密を避けて過ごしています。

 長い自粛生活では、自宅で料理をする機会も増え、どうしても料理がマンネリ化しやすくなります。先日、訪問先で「ホウレン草って、おひたしにするくらいしか思いつかない」とおっしゃる方がいました。毎回「おひたし」だと飽きるから、頻繁には食べられないとのこと。

 今回は、野菜をおいしく食べるための工夫をご紹介します。

病院厨房(ちゅうぼう)での仕事で「和え物」の面白さを知る

「ホウレン草の○○和え」、あなたはいくつ作れますか?

 私は以前、約300床の長期療養型病院に勤務していました。入院されているのは、ほとんどが高齢者です。糖尿病や腎臓病、肝臓病などの内科系疾患の方や、脳卒中や神経難病などで体に 麻痺(まひ) がある方がいらっしゃいました。様々な事情で入院が数年にもなっていたり、そこで人生を終えたりする方もいました。

 そんな患者さんたちにとって、生活の中での一番の楽しみは「食べること」でした。私が所属していた栄養科では、入院患者さんの背景を考慮して、食べる意欲が「生きる意欲」につながるような給食を提供することをモットーとしていました。お正月のお節料理や敬老の日にお出しする松花堂弁当など、特別な日の食事になると、数か月前からメニューを考え、どんなに手のかかる料理であっても、給食が時間通りに配膳できるよう調理のスケジュールを組みます。数百人分の食事を365日おいしく提供するためには、季節ごとの食材を活用して、なるべく料理の味付けがワンパターンにならないような工夫が必要でした。

 病院の管理栄養士や医師は、「検食」という形で病院給食を試食することが義務付けられています。私にも順番で「検食」が回ってくるのですが、和え物の種類が豊富なことに驚かされました。

 例えば、「ホウレン草の和え物」では、

 「ショウガ 醤油(しょうゆ) 和え」「だしわり醤油和え」「おかか和え」「ごま和え」「おろし和え」「くるみ和え」「酢 味噌(みそ) 和え」「ゆず味噌和え」「白和え(ピーナツバター味)」「白和え(ねりくるみ味)」「なめたけ和え」「 海苔(のり) 和え(海苔の佃煮を混ぜる)」「ツナ和え」「かにかまぼこ和え」「ほぐし蒸し鶏和え」「ゆかり和え(ゆかりごはんの (もと) を混ぜる)」「いり卵和え」……。

 すべてを思い出せるわけではありませんが、ざっとこんな感じです。

 ホウレン草だけでなく、ブロッコリーやキャベツ、白菜など、季節ごとの旬の野菜で作れば、さらにレパートリーが増えて、いろいろな味を楽しむことができます。病院給食の和え物の中で、私が特にお気に入りだったのは「白和え」でした。木綿豆腐を水切りして、味噌やピーナツバターを加えてすりつぶし、それにゆでてから水を固く絞っておいたホウレン草を和えます。白和えは、豆腐がつなぎになって飲み込みやすくなるうえに、たんぱく質も摂取することができ、栄養価の高い一品です。

 幼い子どもを育てるお母さんから「子どもが青菜を食べてくれない」という相談を時々受けますが、「ただ () でただけ」の青菜に、青臭さを感じて嫌がっているのかもしれません。

 我が家では、子どもたちがまだ小さかった頃、砂糖をやや多めに使った「ごま和え」や「おかか和え」にすると、よく食べてくれました。家庭での野菜料理のレパートリーを増やすことで、野菜が苦手なお子さんを減らすことができるかもしれません。

カレーに入っている野菜なら

 野菜が嫌いでも、「カレーライスに入っていれば食べられる」という子どもがほとんどです。カレーのスパイシーな香りと味付けで、野菜のもつ独特の味や香りが緩和されるからでしょう。野菜 (いた) めでも、風味付けにカレー粉を使うだけで箸が進むことがあります。

 和え物にも、独特の味や香りをやわらげ、野菜のおいしさを引き立てる効果があります。新鮮な野菜はシンプルな味付けにして、自然な味わいを引き立てる方がおいしい場合もありますが、仕事や育児で忙しいために、食料は週に1~2回のまとめ買いをしているご家庭では、いつも採れたての野菜を食べられるとは限りません。例えば「ひと玉のキャベツをどう使いきるか」といったことを、家庭のキッチンを切り盛りする人は常に考えなくてはいけませんからね。

 「健康のために野菜を食べたい」というニーズが増え、以前よりコンビニやスーパーのおそうざい売り場では野菜料理の品ぞろえが増えてきた印象ですが、毎日では飽きてしまいませんか? そんなときは、生野菜に少しだけ手間をかけて、野菜を和え物にしてみてはいかがでしょうか。ネットからでも、豊富な和え物のレシピが手軽に手に入ります。こってりと味が染みた煮物よりも、お酢などの酸味を生かした和え物の方が、減塩しやすいこともおすすめする理由のひとつです。

 この夏、家庭のメニューに涼しげな和え物を取り入れて、献立のマンネリ化を脱するきっかけになればいいですね。(在宅訪問管理栄養士 塩野崎淳子)

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塩野崎淳子(しおのざき・じゅんこ)

 「訪問栄養サポートセンター仙台(むらた日帰り外科手術WOCクリニック内)」在宅訪問管理栄養士

 1978年、大阪府生まれ。2001年、女子栄養大学栄養学部卒。栄養士・管理栄養士・介護支援専門員。長期療養型病院勤務を経て、2010年、訪問看護ステーションの介護支援専門員(ケアマネジャー)として在宅療養者の支援を行う。現在は在宅訪問管理栄養士として活動。

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