僕、認知症です~丹野智文46歳のノート
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コロナ感染より怖い「拘束」「閉じ込め」
認知症当事者のための勉強会「リカバリーカレッジ」を、地元の仙台で開いています。先月は、介護施設での新型コロナ感染を取り上げたNHKの番組を皆で見ました。
映像では、集団感染が起きた施設で、防護服を着た職員が食事介助などに当たっていました。おそらく入所者の多くが認知症でしょう。全員、顔にぼかしが入っていて表情は分からなかったのですが、普段と違う異様な光景に、不安や恐怖を感じていたのではないでしょうか。
私にとって、このコロナ禍の本当の恐ろしさは、感染して発症することだけではありません。認知症の人が、不安で落ち着きをなくして、あるいは「感染防止のため」として、縛られたり、閉じ込められたりする心配が、現実になりかねないことなのです。
「わけも分からず入院」の恐怖
認知症の人を縛る――そんなことが、本当にあるのかと思う人もいるでしょう。この日、勉強会に参加した当事者からも、「そういうのは、昔の話なんじゃないの」という声が上がりました。
残念ながら、病院で認知症の人が縛られるのは、現代の日本でも全く珍しいことではありません。
コロナ感染に限らず、認知症の人が入院する時、医師などの病院関係者も家族も、本人には何も説明しないことが少なくないのです。突然、見覚えのない病室に連れてこられて、なぜ自分がここにいるのか、いつ出られるのかも分からないのですから、誰だって不安になります。それで大きな声を上げたり、外に出ようとすれば、職員が駆け寄ってきます。怖くなり、逃げようとして暴れると、「自身や他の人にけがをさせる恐れがある」として、縛られてしまうのです。
本人の視点を想像してみてください。これ以上の恐怖があるでしょうか。
誰もが危険と隣り合わせ
体を縛ることが、認知症の人の心や体に与えるダメージは計り知れません。それまでは普通に歩いたりしゃべったりしていた人が、たった1日縛られたら、車いすに座っているのがやっとというほど、状態が悪化してしまうのです。
私は、認知症の仲間がそういう目に遭うのを度々、見聞きしてきました。「感染防止」が最優先となった今、認知症の人を「縛る」あるいは「閉じ込める」ことのハードルが下がっているのではないかと、危機感を抱いています。私自身も含め、認知症の人は誰もが、この危険と隣り合わせなのです。
本人の視点を忘れないで
医療・介護関係者や、認知症の家族がいる皆さんにお願いです。コロナ禍で、普段と違うことがたくさんあると思います。「認知症だから、理解できない」なんて決めつけないで、本人にも分かりやすく説明してあげてください。それがうまくいかなかった場合にも、縛ったり閉じ込めたりする前に、本当にそこまでしなくてはならないのか、他に方法はないのか、考えてみてもらいたいのです。
コロナが猛威をふるう中で、医療・介護に関わる人たちの奮闘には、私も感謝の気持ちでいっぱいです。普段よりずっと大きな負担を抱えて、余裕を失いがちな時だからこそ、認知症の人の視点を忘れないでほしいと心から願っています。(丹野智文 おれんじドア実行委員会代表)
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確かに精神科ではそのようなことが行われています。認知症の方が理解できないとは思いませんが、拘束になる方は家族や施設職員に対しても暴力があったり、徘徊(はいかい)や落ち着きのなさで食事や飲水ができず、このままでは命の危険がある。点滴をしても引き抜いて、辺りは血だらけ…。そんな方が多いです。もちろん介護抵抗のある方の中には十分な説明をすれば全く抵抗がなくなる方もいらっしゃいます。ただ、疎通はそれほど悪くないのに、平衡感覚を司る部分の脳が萎縮しているのか、立つ、座るの動作を促すだけで「そんなことはできない、怖い‼️」と大暴れする方もいました。拘束するかどうかは、どれだけ医療介入するのかという事にもつながる話だと私は考えます。そのままそっとしておけば、糞尿まみれになり、お風呂にも入らず、ごはんを食べなくて、遠からぬ先に亡くなる人を、無理やりオムツを替え、数人がかりでお風呂に入れ、ごはんを嫌がる人にゼリーや飲み物なら入らないか、手を替え品を替えなんとか食べさせようとする。
高齢者の医療介入を減らせば認知症で拘束される方もぐっと減るでしょう。認知症がひどくなる前に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなる方が増えると思いますし、心筋梗塞や脳卒中の方を「もうお年ですし、治療はしないでおきましょう」ということになれば、その方は将来、認知症で拘束されることもないでしょう。
医療が進んで、保険制度が整っている日本だからこそ生んでしまう悲劇でもあります。
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