女優 比企理恵さん
一病息災
[女優 比企理恵さん]パニック障害(2)恐ろしくなった舞台
四六時中、言いようのない不安感、恐怖感につきまとわれ、不眠も続いていた。
舞台俳優としての仕事に影響が出ないはずがない。
楽屋で一点を見つめたまま動けなくなったり、出番待ちの舞台袖で、いきなり不安に襲われて、パニックを起こしたり。
異変を察した共演者が、「大丈夫。落ち着いて」と声をかけてくれるが、「大丈夫じゃない!」と、かえって気持ちの収拾がつかなくなる。大好きだった舞台が恐ろしくなっていった。
デビューしてしばらくは、テレビドラマの仕事が中心だった。だが、主人公をいじめるような敵役が増え、だんだんと嫌気がさすようになった。
その頃に起用されたミュージカル「ピーターパン」のヒロイン役が高い評価を受け、俳優としての軸足は、テレビスタジオから劇場へと移った。以降、仕事が途切れることはなかった。
共演者、スタッフが心を合わせて作り上げていく舞台は楽しく、やりがいがあった。そんな大切な場所を、自分のせいで、台無しにしてしまうかもしれない。
公演期間中の休みを利用して、クリニックを受診した。
「パニック障害です」
医師から告げられた病名は、初めて耳にするものだった。薬もあると言われ、ほっと安心した。
ところが、本当の苦しみはここからだった。
◇
女優 比企理恵 さん(54)
【関連記事】