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医師が教える「女と男、髪と地肌の話」 田中洋平

医療・健康・介護のコラム

夏になると気になる「ムダ毛」、処理はどうしてますか?

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 都会で電車をよく使われる方ならお気づきかもしれませんが、春先ぐらいから、脱毛治療の車内広告が一気に増えます。雑誌やネットでも同様です。薄着の季節になることで体のラインだけでなく、肌の露出にともなう体毛を気にされる女性が増えるからだと思います。

 今年は新型コロナの猛威が収まらず、いつものような活動的で楽しい夏を楽しむのは難しいようです。とはいえ、長かった梅雨がようやく終わり、暑さも本番です。夏服で外出したり、水着を着たりする機会もあるでしょう。そうなると、体毛を気にする方も多いと思います。

肌への負担も軽いレーザー治療

夏になると気になる「ムダ毛」、処理はどうしてますか?

 多くの方は、必要に応じ、カミソリなどを使って、自分自身で 剃毛(ていもう) をされていると思います。部位によっては、自分自身で () るのは難しく、仕上がりに不安があったり、肌や粘膜を傷つけてしまうことを恐れたりするために、医療機関やエステサロンに任せる方が増えてきていると思います。

 数年前に、長野県内にお住まいの40代の女性が、私のクリニックにわきと 下腿(かたい) の脱毛の相談にいらっしゃいました。ご自分で定期的に剃毛されてきたとのことで、毛は太く、毛穴周囲の色素沈着や毛穴の開き、角質層の荒れが見られ、肌質はざらざらになっていました。

 私のクリニックで数か月に1度、医療レーザー脱毛を行うと、回を重ねるごとに、毛が細くまばらになり、色素沈着も減っていきました。治療開始から1年後には、すっかりきれいにすべすべのお肌を取り戻しました。

 医療機関で行われるレーザー脱毛の場合、個人差はありますが、数回の治療でほぼ生えてこなくなります。私のクリニックでは、両わきの脱毛なら1回2万円、3回セットで5万円なので、治療費は安くはありません。ただ、痛みもほとんどなく、肌に対する負担も少なく、長期的な剃毛で認められる剛毛化、色素沈着や毛穴の開き、肌質の悪化もありません。

 しかも、文字通りの永久脱毛ですので、ずっとすべすべの状態を維持できます。
 やはり、私のクリニックでも医療レーザー脱毛治療は根強い人気があります。

やけどによる色素沈着を防ぐために

 脱毛レーザーは20年ほど前から急速に普及しました。当時は治療費がとても高い治療でしたが、現在では患者さんの負担も手軽になりました。

 とはいえ、治療者の技術が問われる分野でもあります。

 以前、長野県内にお住まいの20代の女性が私のクリニックにいらっしゃいました。県外の他の医療機関で下腿のレーザー脱毛を受けたところ、やけどをしてしまったとの相談でした。診察したところ、やけどによる色素沈着も見られました。

 レーザー脱毛によるやけどの治療だけなら、多くの場合、数週間以内には落ち着きます。でも、やけどによって発症してしまった色素沈着の場合、きれいに治るまでは半年から数年かかってしまいます。この患者さんも、きれいに治るまで2年かかりました。

 とくに、下腿の場合は、沈着した色素が消えるまでにとても時間がかかります。一方、顔の場合は新陳代謝が活発なので経過はやや早く、シミ取りや色素沈着治療のために同じようにレーザー治療をしても、多くの場合数週間くらい、長くても数か月できれいになります。背中や脚は代謝がゆっくりなので、色素沈着治療はとても時間がかかります。

 レーザー脱毛は、機種選びや、照射波長の選定、出力調整に注意が必要な治療なのです。

永久脱毛は、本当に「永久」なのか?

 さて、「永久脱毛」は、時間的にも費用的にも、それなりの負担がかかります。だからこそ、本当に「永久」なのかどうかは、患者さんにとっても気になるところですね。

 それについては、十分に毛根が処理できれば、ほぼ永久脱毛になるとお答えします。

 十分に毛根が処理できるように、本来ならできるだけ強い出力でレーザーを照射したいのですが、皮膚の色調や痛みの程度から、副作用を起こさないように、弱めの出力で少しずつ照射することもあります。

 毛が太かったり、密度が高いと、治療中の痛みが強くなる傾向にあります。もともと色黒の肌をお持ちの方は、毛根だけでなく、皮膚のメラニンがレーザーのエネルギーを吸収することで、やはり熱くなり、痛みを伴う場合があります。

 痛みを軽減するためにも、レーザー照射時は皮膚表面を冷却しながら治療するのですが、強い痛みを訴えられる場合には、出力を少し下げる必要があります。十分に毛根が処理できなければ、細い産毛のような毛が生えてきます。

 もう一つ、知っておいていただきたいのは、医療レーザー脱毛は、活動期の毛根にだけ作用するということ。その瞬間に毛が生えていない休眠状態の毛根は処理することはできません。そして多くの患者さんは驚かれますが、活動期の毛根はほんの一部で、多くの毛根は休眠期なのです。一度医療レーザー脱毛をしても、休眠期の毛根が目覚めて、毛が生えてくると治療前と同じような状況になり、「全然効果がない!」と 愕然(がくぜん) とされる方もいらっしゃいます。だから、永久脱毛は複数回の治療が必要になります。

 患者さんがムダ毛が減ってきたと喜ばれるのは、2回目の照射後からのことが多いです。

 やはり、患者さんは、相応の決心と心の準備をされて医療機関にやってきます。それだけに、しっかりした効果を期待して、「永久脱毛になるように、最強でレーザー照射をお願いします」と頼まれる患者さんも少なくありません。

 もちろん最大限の効果が出るようにベストを尽くすのは当然なのですが、同時に副作用を最小限に抑えることも、大切な医師の義務なのです。(田中洋平 形成外科医)

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田中 洋平(たなか・ようへい)

 クリニカタナカ 形成外科・アンティエイジングセンター(長野・松本市)院長 新潟薬科大学客員教授、東京女子医科大学非常勤講師。1975年生まれ。

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