新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
病気があっても、ありたい自分であるために
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
武田飛呂城(たけだ・ひろき)さん
1978年生まれ。東京都在住。血友病・HIV・慢性肝炎・家族性高コレステロール血症当事者。NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会理事。他に複数の患者支援団体の役員や委員等も務める。座右の銘は「弱気は最大の敵」。
血友病の武田飛呂城さん(下)
NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会理事の武田飛呂城さん。カフェのカウンターに座ってノンカフェインのコーヒーを飲みながら、マスターである私を相手に話をしてくれている。
さきほどまで、「血友病」「HIV」「慢性肝炎」「家族性高コレステロール血症」といった病気を抱えている様子について、聞かせてもらった。
「これだけ病気があると、病院に行くのも大変ですね?」
さぞかし頻繁に通院しているのだろうと想像するが、平日の昼間は仕事で動きにくいはずだし、どう両立しているのか興味があった。
「月に1日、同じ病院でまとめて複数の診療科を回るので、時間はかかりますよね」
薬を毎日10錠ほど飲んでいるが、自己管理ができている今は、症状も安定しており、診察の回数なども最低限で済んでいるようだ。
「複数の病気を、バランスよくコントロールしていくって大変なのでは?」
「そうなんですよ。医師は自分の担当する科の病気は専門ですけど、他の科の病気となるとどうしても、という面がありますからね」
医師を批判しているわけでは決してなく、専門性の高い病気について、それぞれの医師のサポートを得ながら、自分の体をコントロールするのは自分自身であるという意識を持っているのだという。
自己管理の大切さ
「そういう考えって、いつぐらいからあったのですか?」
「それは、NPO法人日本慢性疾患セルフマネジメント協会のプログラムを受講した20歳代前半の頃からですかね」
そのプログラムとは、病気を持った方が毎週1回2時間半のワークショップに6回連続で参加する。自己開示が上手にできるようになり、さらには自己管理、セルフマネジメントをできるようになる講座だという。
「そのプログラムが目指しているのって何ですか?」
「簡単には治らないような疾患があると、人生の全てがその疾患で占められてしまう思考になりがちです。しかし、そうではなく……」
確かに、私も生まれたときから二分脊椎という疾患があるし、今はがんも患っている。つい、日々の生活の中で病気のことを真っ先に考えてしまう。
「そもそもとして、自分がやりたいことや、こうありたいと願う理想の姿があると思うんです。その充足感ある自立した生活を、たとえ治らない病気があっても、営んでいけるような姿になってほしいんです」と、武田さん。
なるほど。がんがあるから旅行をあきらめるのではなく、がんがあっても好きな旅行に行き続けるにはどうしたらよいかを、考えていくということだろうか。
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