文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナがあぶり出した過剰な医療供給という課題

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

日本循環器学会のオンライン学術集会から

新型コロナがあぶり出した過剰な医療供給という課題

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、多くの医療機関の外来患者や入院、手術件数などの減少による経営の悪化が伝えられている。医療崩壊と呼ばれるような急激な変化を招くことがあれば、地域の医療体制には大きな混乱が生じる。医療崩壊を引き起こさせないような、国による支援が欠かせない。また、感染への恐れから患者が受診を手控えることによる病状の悪化の懸念もあり、かかりつけ医の果たす役割はますます重要になると思われる。

 ただ、そのうえで、果たして新型コロナ前の医療体制に戻ることを考えるだけでいいのか、新型コロナによってあぶり出された日本の医療が抱える課題に向き合い、これを奇貨として新しい医療のあり方を考えるべきではないか……。先週、オンラインで開催された日本循環器学会学術集会(会長・木村剛京都大学教授)での議論を聞き、そんなメッセージを受け取るとともに、思いを強くした。

心臓カテーテル治療をめぐる臨床試験

 今回の学術集会の主なテーマに、心臓の冠動脈の狭窄(きょうさく)にカテーテルを挿入して広げる治療(PCI)や、心房細動に対する焼灼(しょうしゃく)治療(アブレーション)などについて、適応を改めて考え直そうというもの、また、新型コロナが及ぼす医療への幅広い影響について考えるというものがあった。7月27日~8月2日にわたって開催され、最終日の2日、PCIの適応に関するシンポジウムと、新型コロナ時代における循環器診療をテーマにしたクロージングセッションを聞いた。

 PCIの適応をめぐっては、昨年秋に発表された国際臨床試験「ISCHEMIA試験」の結果が、大きな波紋を投げかけている。米国の研究者が主導し、日本を含む300施設余り、5000人以上の中等度以上の虚血がある安定狭心症の患者について、PCIなどの侵襲的治療を行ったグループと、保存的な薬物治療を行ったグループに分けて比較したもので、結果は、死亡などについて有意差がみられなかったというものだ。

 PCIなどの侵襲的治療を積極的に行っている日本の循環器医療においても重要な結果で、内容についての詳しい解釈や実臨床においてどう考えるかなどについて議論されている。この日のシンポジウムでも、提示された症例について、薬物治療で様子をみる立場とPCI治療を行う立場で、医師によっても意見が分かれた。どのような場合にどんな治療が適切と考えるかは、さらに議論を深める必要があるが、十分な説明を行ったうえで患者の希望を聞き、患者とともに治療法を決定する「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」を進めることが重要だとの考えが示された。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

tamura-yoshihiko_profile

田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

田村専門委員の「まるごと医療」の一覧を見る

1件 のコメント

コメントを書く

無駄な医療コストが必要な組織を支える皮肉

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

医療界で地位も名誉もある人がそのような提言をされること自体に大きな意味があると思います。 現実問題、既にある制度や人材を総入れ替えは無理ですので...

医療界で地位も名誉もある人がそのような提言をされること自体に大きな意味があると思います。
現実問題、既にある制度や人材を総入れ替えは無理ですので、変化は必ずしも急速ではないと思いますが、おそらく経済特区とかモデル地区、モデルのグループ病院が出来上がって塗り替えていくのかなと思います。
お金や指揮系統の連結なしに動かない部分があるというのは、本文の裏返しでもあります。

病院の赤字で、コロナ対応で大変な上にボーナスカットの記載も多くの新聞にありますが、病院が潰れたらさらに様々な制限が加わりますし、この状況下でリスクと重責を背負いたい人ばかりでもないでしょう。
良い案であっても、巡りあわせが悪くて失敗する事例もよくありますが、それで叩かれる可能性って個人には大きなリスクです。

そういう中で、介護領域も含む医療の必要性や緊急性を誰がどのように判断するか?
医療だけでも様々な正義の軸がありますが、さらに政治や経済まで絡みますし、様々な個人や組織のエゴも対立します。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事