女優 比企理恵さん
一病息災
[女優 比企理恵さん]パニック障害(1)自分が壊れるのを実感
5か月近くも、舞台の仕事が途切れずにいた。
一つの作品が千秋楽になっても、すぐに次の芝居の稽古が始まる。長い地方公演が続き、自宅にも帰れていない。
1993年。28歳になっていた。アイドルとしてのデビューが14歳だったので、それまでの人生のきっかり半分を芸能界で過ごしてきた。忙しい毎日は当たり前だった。
ところが、その夜は少し様子が違った。
名古屋・名鉄ホールの舞台が終わり、ホテルに戻った。身も心もクタクタなのに、ベッドに入っても、一向に眠りがやってこない。
少し意識が遠のいても、すぐに大量の寝汗で目が覚める。やがて、心臓がバクバクと暴れ出し、ベッドが大きく波打っているように感じた。
なんだか、おかしい――。
翌日も舞台がある。地方公演はまだまだ続く。絶対に穴は開けられない。
「眠らなくちゃ」と焦るほど気分も体調も悪化する。
そのまま朝を迎えたが、状態は改善しないばかりか、さらに悪化していた。言いようのない不安感、恐怖感が唐突に襲いかかってきて、 動悸 が激しくなる。
夜が来ても眠れない。
「自分が壊れていくのを実感し始めました」
それでも――。毎日、舞台の幕は上がってしまう。
◇
女優 比企理恵 さん(54)
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