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児童劇団の予定表「取り消し」の線びっしり、「耐え忍ぶしかない」…廃業も続々

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「劇団風の子九州」の公演の一場面(劇団提供)

 小中学校などで子ども向けの演劇を披露してきた各地の児童劇団が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦境に立たされている。「密」を避けるためや、休校で削られた授業時間の確保などの理由で、上演予定のキャンセルと延期が相次いでいるためだ。首都圏では、半世紀近く続けてきた劇団が廃業を決めるケースも出ている。(島田愛美)

 福岡市早良区の「劇団風の子九州」の事務所には7月下旬、公演予定の取り消しを示す線がびっしり引かれた予定表が置かれていた。「今年の上半期はほぼ無収入です」と代表理事の仮屋祐一さん(61)はため息をついた。

 風の子九州は、1950年に東京・世田谷で旗揚げした児童劇団の草分け「風の子」を母体に、その地方組織として85年に設立された。家族の絆やいじめ問題、九州各地の伝承など様々なテーマで劇を創作。「子どものいるとこどこへでも」を合言葉に、各地の小中学校などで年500~550件の公演をこなしてきた。

公演キャンセルの線が引かれた予定表を手に、劇団の現状を説明する仮屋さん。自身も俳優として舞台に立つ

 しかし、今年は新型コロナの影響で2月下旬以降、177件(7月1日現在)がキャンセルとなり、損失額は計2055万円だった。2学期は「芸術の秋」でかき入れ時だが、収束の見通しが立たない中で、さらに中止、延期の連絡が入っているという。

 劇団は給料制で、団員18人には副業を禁止している。支援者からの寄付金や国の助成金だけで給料や事務所経費などを賄うことは難しく、金融機関から2000万円の融資を受けてしのぐ。仮屋さんは「コロナ以前から余裕はなかったが、今後は給料制の見直しも必要になるかもしれない」と厳しい顔で話す。

 日本児童・青少年演劇劇団協同組合(東京)がまとめた加盟60団体へのアンケートによると、7月13日時点で計3028公演などが休止となり、損失額は計約12億3800万円に上った。教育現場では近年、英語科目の増加や「脱ゆとり教育」などで鑑賞会の開催が減る傾向にある。そこへ新型コロナの影響が追い打ちをかけ、半世紀近く続けてきた劇団など首都圏の数団体が廃業を決めたという。

 児童劇団は、子どもたちに自由な心を育んでもらおうと戦後間もない頃から全国で相次いで発足し、国も後押ししてきた。新型コロナの影響を受け、国は6月に成立した第2次補正予算で、文化芸術関係者・団体に対する支援策に560億円を計上した。しかし、新たな公演・制作の経費補助が主となっており、休演分の補償はない。

 児演協の鈴木徹・専務理事は「新たな事業を始める体力がない劇団も多い。子どもたちが生の芸術に親しむ機会が減ることのないよう、劇団の存続への直接的な支援が必要だ」と訴える。

 新たな試み 演劇配信へ

 ほかの児童劇団も苦慮している。福岡県須恵町の「劇団さんぽ」は3月~7月、約80公演が中止となり、損失額は約800万円に上った。ここも給料制で、代表の秋吉雅子さん(55)は「活動を続けるためには今を耐え忍ぶしかない」と語る。

 新たな試みを模索する団体も。九州初の児童劇団として1965年に設立された「劇団道化」(福岡県太宰府市)は、ウェブ会議システムを活用した演劇配信を計画し、9月にも県内の特別支援学校で生配信が行われる。中村芳子理事(65)は「社会全体が先行きの見えない不安を抱える今こそ、子どもたちに心を育む機会を提供したい」と意気込む。

 一方、人形劇団も影響を受けている。佐賀県の「人形芝居 ひつじのカンパニー」など全国42の人形劇団が加盟する全国専門人形劇団協議会(東京)によると、7月8日時点で1007件の公演やイベントが中止・延期となった。

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