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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

自閉症の人には特別な才能がある? 息子が作った「最高傑作」は…

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洋介の「小さな世界」 

 得意なことが何かの達成につながらないのは残念な気もするが、洋介にとっては意味のないことなのだろう。そんな洋介も、大きな作品を作ったことが一度ある。

 ディズニーやアンパンマンなどのキャラクターをかたどった親指ほどの小さなフィギュアがあるが、洋介は幼稚園の頃からそれが大好きで、与えるうちに50体以上にもなっていた。ある日、「静かに遊んでいるな」と思っていたら、テーブルいっぱいにフィギュアが並べられていた。「すごーい。並んだねぇ」などと言いながら近づいて、はっとした。

 横並びで何列も並べられたフィギュアは、どれも隣と手をつなぐように置かれていて、誰一人として仲間外れになってはいなかった。ヒーローも、悪者も、どこかうれしそうで平和な世界だった。絵画など、学校の先生の指導もあって入選したこともあるのだが、このテーブルの上の「小さな世界」が、彼の最高傑作だと思っている。

いいものはわかる?

3時間も聴けたコンサート。いいものはわかるのか?

3時間も聴けたコンサート。いいものはわかるのか?

 一昨年、クラシックのコンサートに招かれた。主催者から、障害のある人も多く聴きに来るという話を聞いたので、洋介と2人で行くことにした。とはいえ、3時間のコンサートを最後まで聴くのは無理だと思っていた。1時間ほどたって、案の定、飽きて落ち着かなくなってきたその時、舞台にバイオリンのソリストが登場。著名な人であった。

 演奏が始まると、これまで、声を出したり、立ち歩こうとしたりしていた洋介が、ソリストをじっと見つめて動かなくなった。その後は、音楽に集中できるようになり、何と3時間のコンサートをアンコールまで聴くことができたのだ。

 その話をすると、妻は「洋ちゃん、いいものはわかるのね~」とご満悦。ところが、自分が最近始めたウクレレでは、弾き始めるとすぐに毛布をかぶってしまう洋介との間に、軽い緊張が走っている。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

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umezaki_masanao_prof

梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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3件 のコメント

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贈り物

おばキュー

発達障害の子供達が持つと特殊な能力のことを 海外では「ギフト」と表現するらしいですね。 能力を極めれば人類を救う希望になるやもしれませんよ。 ア...

発達障害の子供達が持つと特殊な能力のことを
海外では「ギフト」と表現するらしいですね。

能力を極めれば人類を救う希望になるやもしれませんよ。
アインシュタインにも親はいたはずですから、
人類の希望を育ててると思ってもあながち間違いじゃないかもしれませんよ。

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ありがとうございます。

とも

我が家も息子2人が発達障害です。皆さん色々な人生経験があると思いますが、とにかく読んでいるとグッとくるものがあります。梅崎さんのこのコラムを楽し...

我が家も息子2人が発達障害です。皆さん色々な人生経験があると思いますが、とにかく読んでいるとグッとくるものがあります。梅崎さんのこのコラムを楽しみにしてます。長く続くといいなあ。

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暖かさが

みしん

いつも楽しみに読んでいます 私にも息子がおります 発達障害があり今は学校にも行けていません 毎日辛い思いがありますが、梅崎さんの文章を読んでいる...

いつも楽しみに読んでいます
私にも息子がおります
発達障害があり今は学校にも行けていません
毎日辛い思いがありますが、梅崎さんの文章を読んでいると
温かい気持ちになります
何故かわかりません
言葉が優しいからなのかな
これからも楽しみにしています

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