今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」
エクササイズ・健康・ダイエット
運動は薬だ! 1年半で注射薬が不要になった関節リウマチの女性
運動は薬だ――。いきなりなんだ?と思われるタイトルですが、これは“Exercise is medicine.”を訳したもの。2007年、アメリカスポーツ医学会が提唱し、頭文字を取ってEIMとも書かれることのある国際的活動です。日常的に運動をしている人は3割にも満たないと言われますが、みなさんはいかがですか? 自粛期間中に体力不足に拍車がかかったという人も多そうですね。
寿命を縮める座りすぎ 運動は万能薬
万能薬とも言われる運動ですが、その素晴らしい効能を知っていますか? 高血圧、糖尿病といった生活習慣病の予防はもちろん、がんや軽度認知障害、うつ病、骨粗しょう症の予防、皮膚の若返り、心肺機能、免疫力や学力の向上等々、まさに“治療薬”です。
逆に座りすぎる生活は、寿命を縮めることも分かっています。“新しい生活様式”で、外出や人に会うことが減り、“座りすぎ”が心配になっている人も多いでしょう。この座りすぎ生活は世界的にも問題になっています。運動しなきゃいけない、分かっちゃいるけど……。そんな人に、今回のコラムをお届けします。
関節リウマチでも運動を
5年前に関節リウマチと診断され、治療を受けていた60代の女性Tさん。「膝に水がたまるのを何とかしたい」ということで受診されました。当時の治療は、生物学的製剤のトシリズマブの注射と免疫抑制剤の内服で、血液検査は良好な状態を保っていました。関節リウマチは、慢性に続く関節の腫れや痛みにより、日常生活が制限されることも多い病気で、運動することもままなりません。関節は痛む、でも運動はしなきゃいけない、そんなジレンマに陥ってしまいます。Tさんも、腫れた膝で歩くのもおぼつかない状態でした。
ところでトシリズマブという薬は、血液中の炎症物質でホルモンの一種であるIL-6(インターロイキン6)という物質を無力化させることによって効果を表します。実は運動後に、このIL-6が筋肉からも分泌されていることが分かったのです。ホルモンを分泌する臓器というと、甲状腺や膵臓などホルモンを出すものが思い浮かびますが、実は、筋肉からも様々なホルモンが出ることが分かっています。その数、実に300種以上と言われています。
その多くは、体にとってとてもよいものばかりで、例えばイリシンは若返りのホルモンと言われていますし、SPARCは大腸がん予防作用があります。歩くのが困難なTさんですが、筋力を維持するためにも何とかして運動も“治療”として取り入れていかねばなりません。
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