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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

暑い夏、スポーツにマスクは必要?

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 長く続いた今年の梅雨は、九州などに豪雨による大きな被害のツメ痕も残しました。全国的に気温も低めで、なかなか夏の気配が感じられませんでしたが、8月にはやっと暑くなりそうです。新型コロナウイルスの感染拡大はいまだ収まらず、先行きが見通せない現状です。限定的ながら、お客さんを入れたプロスポーツも開始され、アマチュアも段階的に活動が再開されています。

 そんな中、愛好家が多いジョギングでは、マスクはした方がいいのか、しなくていいのかで、迷っている方も多いと思います。

 Cさんは週に3、4回、自宅の近くをランニングしています。平日は仕事が終わった夜、週末は午前中に走っています。ネットで、「スポーツ時のマスクは不要」という記事を読んだため、自分も走るときにはマスクを外していました。でも、マスクをして走っている人を見かけると迷ってしまいます。

暑い夏、スポーツにマスクは必要?

運動時のマスクは推奨されていない

 日本には、以前からマスクをする習慣がありました。新型コロナウイルス感染症が拡大し、世界保健機関(WHO)が「マスクを推奨しない」としていた時期でも、多くの方が症状の有無にかかわらずマスクを着用していました。そして6月5日、WHOは方針を転換し、感染が拡大する地域で、人と人との距離が十分にとれない時、マスクの着用を推奨するようになりました( https://www.who.int/dg/speeches/detail/who-director-general-s-opening-remarks-at-the-media-briefing-on-covid-19—5-june-2020 )。

 マスクは着用者の感染リスクを下げるのではなく、他人への感染リスクを下げる目的で使用されています。スポーツ時には、他人への配慮としてマスクを着用した方がよい、と直感的には感じます。

 しかし、運動時のマスク着用では、酸素の摂取量が減り、体内の二酸化炭素が増えることで呼吸不全などを引き起こす可能性があります。特に暑い季節になると、熱中症の危険性を高めてしまう可能性が指摘されています。また、新型コロナウイルスの感染経路である呼吸による飛沫(ひまつ)は、適切な距離を保つことで落下したり、乾燥したりします。屋外で2メートル程度の距離を保てば、感染リスクは十分減らすことができます。

 スポーツ庁は5月21日、上記の理由により、学校で体育の授業中、マスクの着用は必要ないと通達を出しました( https://www.mext.go.jp/sports/content/20200522-spt_sseisaku01-000007433-1.pdf )。6月15日には、日本感染症学会と日本環境感染学会が、ジョギングする場合にはマスクは必ずしも必要ないことを、一般市民に向けて提言しています

 さらに、7月2日には、日本臨床スポーツ医学会と日本臨床運動療法学会が出した共同声明( https://www.rinspo.jp/pdf/topics_200707_statement01.pdf )には、「屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的には推奨しない」「新型コロナウイルスはすれ違った程度では感染しないと言われているが、2メートル以上のソーシャルディスタンスを保つようにする」ことなどが盛り込まれました。

暑い夏、スポーツにマスクは必要?

 それでは、Cさんの経過です。

 Cさんは、できるだけ人の少ない時間帯を選んで、マスクを着用せずにランニングをすることにしました。友人と一緒にランニングする際は、並走するかどちらかが斜め後方に位置を取るようにして走っています。

屋内のスポーツは、コンタクトスポーツは?

  (せき) エチケットという言葉があるように、スポーツ中でも他人に感染させるリスクを下げるという意識を持つことは大切です。「自分はマスクを着用してスポーツをします」という人も、血中の酸素濃度が減る可能性があることや、熱中症のリスクが高まることを認識した上であれば、マスク着用を否定する必要はありません。しかし、他の人がマスクをせずスポーツしていることに対して過敏に攻撃することは、情報を正しく理解していないとことになります。

 私たちも、新型コロナウイルスに関する情報をHPおよびアプリで分かりやすく提供しているので、ぜひ活用してください。( https://spomed.or.jp/covid19/

 また、屋内のスポーツや、選手同士の接触がある「コンタクトスポーツ」ではどうすればいいのか――。紹介した資料の中にも、明快な記述はありません。

 結局、すべてのスポーツに当てはまる共通のガイドラインは存在しないのです。それぞれの競技団体において、関係者・専門家が情報を収集し、議論を重ねた上にガイドラインを作成しています。まずは、自分の競技団体の情報を参考にしましょう(例: 日本ラグビーフットボール協会日本バスケットボール協会 )。また、地域によって感染状況が大きく異なるので、自分の住んでいる地域がガイドラインのどの段階に当てはまるのか、適宜情報を確認しておきましょう。

 梅雨が明けると、急激に暑くなることが予想されます。熱中症についても忘れずに、しっかりと予防を心がけましょう。

暑い夏、スポーツにマスクは必要?

 「Withコロナ」の時代においては、これまでとは異なるスポーツ環境への変更を迫られています。それでも、スポーツの持つ価値が変わることはありません。むしろ、新しいスポーツの価値をもたらしてくれることと信じています。(大関信武 整形外科医)

【スポーツ医学検定のご案内】
 私たちは、スポーツに関わる人に体やけがについての正しい知識を広めて、スポーツによるけがを減らすために、「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手のみでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。

 第8回スポーツ医学検定は11月29日(日)に開催予定で、HPで申し込みを開始しています( https://spomed.or.jp/ )。感染予防に配慮した上で行いますが、感染状況によっては開催に影響が出る可能性があることをご了承ください。本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

 1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。2002年滋賀医科大学卒業、2014年横浜市立大学大学院修了。2015年より東京医科歯科大学に勤務。野球、空手、ラグビーなどを通じて、野球肘、肩関節脱臼、アキレス(けん)断裂、骨折多数など自身が多くのケガを経験。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「 スポーツ医学検定 」を開催している。 現在、拓殖大学ラグビー部チームドクター、文京ラグビースクールコーチ兼メディカル担当。2019年ラグビーワールドカップでは選手用医務室ドクターを担当。八王子スポーツ整形外科、蓮江病院でも診療。

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