今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」
医療・健康・介護のコラム
口内炎で食べられず、やせてしまった! 呼吸を変えたら…
口の中のけがは治りやすい
ところで、口の中の傷は治りやすいと思いませんか? 口中には雑菌がたくさんいます。その種類は700種とも言われ、朝起きたときのプラーク 歯垢 はうんちよりも汚いほどだと言われるくらいです。そんな環境に傷があれば、すぐに化膿してしまいそうですが、抜歯をしたり、ちょっと間違って内頬をかんで傷つけてしまっても、ばんそうこうも貼らずにいつの間にか速やかに治ってきます。唾液の中には菌を殺す免疫物質がたくさん含まれていると言っても、 口腔 細菌がプラークを作ってしまえば、唾液の効力も届きません。
口呼吸で冷やすと治りが悪く
どうして、口の中のけがは治りやすいのだろう。その一つの答えが、口腔粘膜細胞表面にある特殊なセンサーである温度感受性イオンチャネルです。このセンサーは、体温程度の温度(36度)で活発に働き、細胞修復を促すことが分かっています。粘膜表面の温度が低かったり、このセンサーがない実験動物では、傷の治りが悪くなることも分かりました。
ということは、口呼吸では口の中が乾燥し冷えるため、この温度センサーが働かず粘膜の修復が遅れてしまいます。あいうべ体操をすれば、顔面の血流が改善し温度が上がり、さらに舌位置が改善し鼻呼吸になります。そうすると口は冷えなくなりますから、口内炎ができても治りやすくなりますし、口内炎ができることが少なくなるというわけです。
口を閉じるだけですっかり消えた
鼻呼吸と口内炎のつながりが分かってきました。ところが、A君は口を動かすのも痛くて、あいうべ体操ができません。こんな時は、どうすれば良いでしょうか。痛みを無理してまで口を動かさなくても良いように、とにかく口を閉じるように意識すること、夜は口にテープを貼ることだけを勧めました。
2週間後の再度の受診の時は、元気なA君の声を聞くことができました。しっかりしゃべることができるようになっています。保護者に確認すると、ご飯の量も増えて活発に動けるようになったと言います。そう、口内炎がすっかり消えていたのです。
命の上流を冷やさない
度々アフタ性口内炎で悩んでいる人は、口呼吸になっていないか、チェックしてください。口呼吸は口を冷やし、口内炎の治りを遅らせます。痛い場合は、「い」と「う」だけの「い~う~体操」でも構いません。口を冷やさない、命の上流を冷やさないことを心がければ、頑固な口内炎から解放されるかも知れません。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)
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