山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
祖父がペットボトルに移した緑の液体 お茶と間違え持参…孫に飲ませて気管挿管する事態に
2歳8か月児。祖父が、緑茶のラベルが貼られたままのペットボトルにワックス剥離剤の原液を入れ、冷蔵庫に保管していた。ワックス剥離剤の液の色は緑色で、緑茶と言われてもわからない色調であった。その日、祖父自身が、そのペットボトルを「お茶」と勘違いして公園に持参。当日は気温が高く、午後0時半ごろ、祖母が、お茶と思ってワックス剥離剤を本児に与えたところ、一口飲んですぐに吐き出した。その後、口の中を痛がったため、30分後に医療機関を受診し、入院した。のどの奥のはれがひどくなったため気管挿管。食道や胃にはびらんが認められ、17日間入院した。( 参考サイト )
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危険な物質は別の容器に移し替えない
傷害予防の原則は、以前に示した三つのE、Environment(製品や環境の改善)、Enforcement(法制化)、Education(教育)で取り組むことです。ワックス剥離剤を飲んだ子どものケースでは、危険な物質は絶対に、本来とは違う容器に移し替えないことなど、家族の管理上の問題(Education)が指定されます。しかし、それだけではなく、ワックス剥離剤が緑茶と見間違える色をしていたという製品の問題(Environment)も忘れてはいけません。誤飲防止のために考えられる予防策について、以下に挙げて、製品や環境の改善 (◎) 、法制化 (☆) 、教育 (○) の印をつけてみます。
【主に中毒起因物質への対策】 ◎ ☆ ○
誤飲しやすい、あるいは中毒を起こしやすい物質が対象となります。
<1>中毒起因物質への対策
- 毒性が高い物質はなくす(毒性の排除、あるいは軽減) ◎
- 毒性物質の味を悪くする(苦み剤の添加など) ◎
- 表示の義務化(どくろマークなど一目でわかる警告ラベル、視覚障害の人でもわかるデザイン)☆
<2>供給やアクセスの機会を減らす
- 製品は、3歳児が口を大きく開けた39ミリ以上の大きさにする ◎
- 子どもの手の届かないところ、見えないところに置く。施錠する ○
- 子どもでは開けにくい箱や引き出しに入れる ○
- 食品・飲料の容器に、食品以外のものを入れて放置しない ○
- 危険な物質は別の容器に移し替えない。ラベルを張り替えない ○
- 乳幼児が開けにくい容器を使用する ◎ ☆
- 包装は、子どもの興味をひかない絵柄、デザイン、匂いにする ◎ ☆
【毒物監視機能の強化、診断法・治療法の開発】 ◎ ☆
われわれの身の回りには、膨大な数の物質があり、それらすべての情報を迅速に得ることはとてもむずかしいことです。地下鉄サリン事件は、今まで誰も経験したことがないサリンという物質によるものでしたが、日本中毒情報センターの情報提供によって物質を特定しました。毒物が何であるかを素早く調べるための化学物質データベースを整備し、いつでも利用できるようなシステムを作っておくことが社会生活の安全のためには必要です。
また、毒物の分析センターを設置して分析法を開発したり、検査法の精度管理をしたりすることも必要です。治療法では、毒物を吸着する活性炭ペーストや、特別な毒物だけに作用する 拮抗 剤の開発、解毒剤の備蓄なども必要となります。
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