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浸水した自宅2階で暮らす高齢夫婦、情報届かず…食料支援「知らなかった」

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おけにためた水で食器を洗う冨永邦子さん(22日午後、熊本県八代市坂本町で)=金堀雄樹撮

 九州を襲った豪雨で、被災した自宅で避難生活を送る「在宅被災者」の実態把握が進んでいない。読売新聞が、全半壊と床上浸水が計100棟を超えた熊本県内の6市町村(八代市、人吉市、天草市、芦北町、相良村、球磨村)に取材したところ、在宅被災者数を把握している自治体はゼロだった。専門家は「行政だけでは限界がある。自治体は民間団体や地域のリーダーと連携して情報収集に努めてほしい」と指摘している。

 「自宅が安心」

 氾濫した球磨川沿いの八代市坂本町の小崎辻集落。自治会長の冨永太蔵さん(69)は妻・邦子さん(69)と一緒に、床上浸水した自宅の2階で暮らしている。

 日中は天井近くまで水没した1階の片付け。冷水のシャワーを浴び、トイレは近くの公民館で借りる。食事は親族らの差し入れと、カセットコンロで作るみそ汁など。集落の15世帯22人のうち、ほぼ半数は自宅に残っているという。

 悩みは、支援や復旧に関する情報が届かないこと。食料支援があることも、しばらく知らなかった。別の集落の知人から支援や復旧に関する情報を記載した紙をもらい、複写して住民に配ることも。避難所にいれば、情報も得られるが、新型コロナウイルスの懸念もある。「もし、感染して集落の人たちにうつしてしまったら、と考えると自宅にいる方が安心」と話した。

自宅に面した川を見る長江登さん(22日午前、熊本県芦北町天月で)=中嶋基樹撮影
自宅に面した川を見る長江登さん(22日午前、熊本県芦北町天月で)=中嶋基樹撮影

 芦北町天月の長江登さん(85)は被災直後の2日間、妻と一緒に避難所に身を寄せた。それでも「避難所では気が休まらない。家の片付けもある」と木造平屋の自宅に戻った。自宅は天井近くまで浸水。天井板は剥がれ、窓から風雨が吹き込む。泥をかき出した後の床上に板を敷いて過ごしている。風呂は、近くの道の駅で温泉施設などを利用する。県民限定のボランティアも足りず、長江さんは「自分でやらなければ、誰も片付けてくれない」とこぼした。

 「手が回らない」

 熊本県内の避難所に身を寄せる被災者は約2000人(21日午後5時時点)。県内の全半壊・床上浸水の住宅は6500棟を超えており、在宅被災者は多数いるとみられている。

 球磨川の氾濫などで約450棟が床上浸水の被害を受けた八代市坂本町では、道路や水道などのライフラインが復旧したこともあり、住民が自宅に戻りつつあるという。市は、現地に入った職員や避難所の住民への聞き取りなどから、約半数が帰宅したと推測しているが、担当者は「正確な数字を把握したいが、とても手が回らない」と漏らす。

 住宅地が大規模に冠水した人吉市の担当者も「罹災りさい証明書の発行や家屋の被害調査に注力しており、戸別訪問が十分にできていない」と話す。避難所で弁当を配布する際、受け取りに訪れた在宅被災者らに状況を聞き取っている。

 多くの集落が一時孤立した球磨村では、保健師らが調査を急いでいるが、「小規模集落が点在しており把握が難しい」と打ち明ける。担当者は「『必要な情報が入らない』との相談が多い。情報が届くよう対策を考えたい」としている。

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