新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
見た目ではわからない病気をもつ同士だからこそ
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)
【今月のゲスト】
石原八重子(いしはら・やえこ)さん
1966年生まれ。愛知県在住。ファブリー病当事者。Fabry NEXT代表。ペイシェントサロン名古屋代表。
ファブリー病の石原八重子さん(下)
ファブリー病という希少難病の患者である石原八重子さんが来店された。今日のカフェは落ち着いているので、手の空いている私は彼女に話を聞かせてもらっている。
これまでに、症状が様々で人により大きく異なることや、患者数が少なく、病名を確定する難しさや、患者同士がつながる大変さを話してくれた。そして、成人している長男も、同じ病気だという。
「この病気は、遺伝性なんです」
そういうことか。
「では、ご両親のどちらかも、同じ病気だったんですか?」
「もう亡くなった父がそうだったようです。いま思えば、いつも疲れていて、横になる機会が多かったんです。でも、最期まで診断はついていませんでした。私がファブリー病だとわかった際に、遺伝性だからということで、子どもも検査を受けたところ、当時17歳の長男が同じ病気だとわかったのをはじめ、親戚を含めると8人がこの病気だとわかりました」
彼女は、明るい性格なので自分の病気のことをオープンにしているが、遺伝性の病気だと、就職や結婚などにも影響が生じる可能性があり、病名がわかっても家族にすら言えない方もいるという。家族にも自分の病気を話せないとは……。その気持ちを察してみても、きっと計り知れないつらさがあるのだろう。
水が入ったグラスの外面に付いていた水滴はもう乾いている。お冷やを提供してからかなりの時間がたってしまったが、興味深い話が続いている。
元気そうに見えても実は……
大きなバッグを抱えて、暑い中を駅からこのカフェまで歩いてきたという彼女は、元気そうに見える。病気であっても、元気に暮らせるのだろうか。
「明日、帰宅したら全く動けなくなるんです、きっと」
ファブリー病は、体内に必要な酵素の一つが作りだせない病気で、見た目ではまったくわからないが、疲れが出ると途端に、体がいうことを聞かなくなるのが彼女の症状の一つだという。
「自分で仕事量を調整することも、治療の一つと言えるのかもしれませんね」
石原さんは、笑って言う。
周囲の人たちは、元気な姿しか目にしないので、遠慮なく仕事を振ってくるらしい。つい、受けすぎて、回らなくなってしまうこともあるそうだ。目に見えない症状というのは、周囲や社会との付き合い方が難しい。
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