宋美玄のわーままクリニック
医療・健康・介護のコラム
「分娩時の妊婦にマスク」はホントに危険?…コロナ禍に出産の安全を考える
緊急事態宣言の発令後、多くの産院では、 分娩 時にコロナウイルスに感染しない、させない対策がなされました。地域や施設にもよりますが、立ち会いや面会が禁止されたり、陣痛室・分娩室で妊婦さんにマスク着用を求めたり。その当時は、日本中で老若男女が自粛し、不便や不自由に耐えていたので、妊婦さんやご家族も受け入れておられたと思います。しかし、一度波が去ると、他の自粛と同じように「あれは必要だったのか?」という声が聞かれるようになりました。
「妊婦さんが死んじゃう!」に多数のリツイート

ツイッターでは、「分娩時のマスク着用なんて、妊婦さんが死んじゃう! 医療従事者の方が防護すればいいだけでは?」という意見が多数リツイートされ、共感を呼んでいました。また、「日本の産院で、分娩時に立ち会いを認めないところがあるのは、人権侵害だ」という趣旨の署名活動もインターネット上で立ち上がっていました(こちらはそれほど反響はなかったようです)。
私はそれを見て、とても悲しくなりました。産院は決して妊婦さんに意地悪をしようと思っているわけでも、妊婦さんや家族の希望を軽んじているわけでもありません。
ほかの妊婦に感染させないように
分娩時には、いきみを逃すために「ヒーヒーフゥー」などの呼吸法を行ったり、いきむ時には大きく何度も吸ったり吐いたりしてから息をこらえたりします。いずれもマスクなしでは微粒子(エアロゾル)が発生し、新型コロナウイルス感染にはハイリスク視されています。日本産科婦人科学会は、地域や感染状況によって必要な感染対策が違ってくるため統一見解は出していませんが、「院内感染予防の目的で産院からお願いした場合は、マスク着用にご協力をお願いしたい」としています。
分娩は長時間におよぶ場合もあり、マスクを着用したままでは苦しく感じることもあるかと思います。苦しい場合は酸素マスクを代わりに使ったり、上から当てたりすることも可能です。また、マスクを着用しても酸素飽和度に影響はなく、「死んじゃう」ということはありません。赤ちゃんにも影響はなく、苦しがることもないので、ご安心ください。
もちろん、ガウンやマスクなどの医療物資が潤沢にあるなら、医療者側が防護することで、院内感染はある程度防げるでしょう。しかし、妊婦さんからほかの妊婦さんに感染することも防がなくてはいけません。分娩室で、カーテン越しに隣の妊婦さんがマスクなしであえいでいたら、前の妊婦さんが発生させたエアロゾルが舞う分娩室で産むことになったら、やはり不安に感じるのではないでしょうか。分娩室は、新生児の体温を下げないよう、通常は締め切って保温しています。窓を開けっ放しにすることはできないのです。
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本当に苦しかったですよ。 陣痛中呼吸1回するのも激痛が走る中、マスクのせいで呼吸回数が増えるのが辛かったです。 呼吸による痛みを避けようと何度も...
本当に苦しかったですよ。
陣痛中呼吸1回するのも激痛が走る中、マスクのせいで呼吸回数が増えるのが辛かったです。
呼吸による痛みを避けようと何度も無意識に息を止めて意識が飛んだようです。
助産師さんから「呼吸して!」と叩かれマスク剥ぎ取られ酸素マスク押し付けられての出産となりました。
ちなみに、一つの個室での陣痛→分娩だったので他の妊婦さんはいませんでした。
本当に必要だったんでしょうか。四角四面の感染対策で無意味に苦しめられたような気がしてなりません。
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