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認知機能の維持には下戸より適量?

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 認知機能はさまざまな要因の影響を受け、時間とともに変化する。そのため、1度の検査で認知機能を把握することはできない。米国・University of Georgia College of Public HealthのRuiyuan Zhang氏らは、複数回にわたり認知機能検査を受けた中高年を対象に、前向きコホート研究を実施。その結果、特に白人において全く飲酒しない人より少~中等量(女性8杯未満/週、男性15杯未満/週、1杯はビール約350mL)の飲酒者で認知機能が良好に維持されることが明らかになったと、JAMA Netw Open( 2020;3:e207922 )に発表した。

米国の中高年、約2万例を約9年間追跡

認知機能の維持には下戸より適量?

(C)Getty Images ※画像はイメージです

 適量の飲酒が認知機能を改善させるという報告がある一方で、適量であっても認知機能を低下させるとの報告もあり、一貫性がない。

 そこで Zhang氏らは、米国で実施している健康と退職に関する研究(HRS)のデータを用いて、前向きコホート研究を実施。米国の中高年における少~中等量の飲酒が認知機能に与える影響を検討した。

 解析対象は、HRSの参加者のうち1996~2008年の登録時と、その後隔年で少なくとも3回の認知機能検査を受けた1万9,887例(平均年齢61.8歳、女性1万1,943例、白人1万6,950例)。追跡期間は平均9.1年だった。

 主要評価項目は、認知機能の推移と年間変化率とした。認知機能は、精神状態、単語想起、語彙の3ドメインのスコアで評価。また、総認知機能は精神状態および単語想起の合計スコアとした。

少~中等量の飲酒で認知機能の低下を34%抑制

 認知機能スコアを基に、対象を認知機能が登録時から低いまま推移する群と高く維持されている群に2分したところ、認知機能が低いまま推移する群では飲酒歴のない人が多かった。

 年齢、性、人種/民族、学歴、精神状態、喫煙、BMIを調整した上で解析したところ、総認知機能の低下リスクは、飲酒未経験者と比べて少~中等量の飲酒者で34%有意に抑制された〔オッズ比(OR)0.66、95%CI 0.59~0.74、P<0.001〕。飲酒経験はあるが、現在は飲んでいない禁酒者においても同様に、飲酒未経験者と比べてリスクは28%有意に抑制されていた(同0.72、0.63~0.82、P<0.001)。

 一方、多量飲酒者ではリスクの有意な抑制は認められなかった(同0.87、0.70~1.10)。精神状態(同0.71、0.63~0.81、P<0.001)、単語想起(同0.74、0.69~0.80、P<0.001)、語彙(同0.64、0.56~0.74、P<0.001)の各ドメインでは、飲酒未経験者と比べて少~中等量の飲酒者で、スコアの低下リスクが有意に抑制されていた。

 また、少~中等量の飲酒者において、通常は加齢とともに低下するとされる総認知機能の年間低下率が抑制されていた(β係数0.04、95%CI 0.02~0.07、P=0.002)。

 さらに、認知機能のうち精神状態の推移には、人種/民族による差が存在することが示された(交互作用のP=0.02)。白人では少~中等量の飲酒者で飲酒未経験者に比べて、精神状態スコアが低いまま推移するリスクが抑えられているのに対して(OR 0.65、95%CI 0.56~0.75、P<0.001)、黒人ではそうした関連は認められなかった。

飲酒と認知機能との関連を解明する研究が必要

 研究の限界として、Zhang氏らは<1>飲酒量は自己申告である<2>女性や黒人の多量飲酒者が少ない<3>飲酒量の変化を考慮していない<4>登録時の慢性疾患の有無による影響を否定できない<5>多量飲酒者が少なかったためデータの信頼性が低い可能性がある―ことを挙げた。

 その上で、同氏らは「米国中高年の中でも特に白人において、少~中等量の飲酒が認知機能の良好な維持に関連していることが示唆された。飲酒量と認知機能の維持には逆U字型の関係があり、良好な認知機能を維持するためのアルコールの適量は1週間当たり10~14杯と考えられる」とコメント。「今後は飲酒と認知機能の根底にある詳しいメカニズムの解明が必要だ」と付言した。(比企野綾子)

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