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田村専門委員の「まるごと医療」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ 医学教育にも変化の波

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学会誌で実践報告を緊急特集

新型コロナ 医学教育にも変化の波

 新型コロナウイルス感染症は、医学教育のあり方にも、どのような変化をもたらしているのか。日本医学教育学会は、機関誌「医学教育」(6月25日発行)で「パンデミック下の医学教育―現在進行形の実践報告―」を緊急特集し、7月、ウェブサイトで無料公開した。

 医学教育の現場で、どのような困難が生じたのか、それに対してどのような対策を講じたのか、教育者としての個人的な思いや考え、未来の医学教育者へのメッセージについて、関係のメーリングリストで投稿を呼びかけたところ、2週間余りの間に77編の投稿があった。テーマは、オンラインでの授業や実習の試み、教育リソースの共有、学生支援、卒後臨床研修など多岐にわたる。

「オンライン臨床実習」の試み

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学生が実際の患者に接して学ぶ臨床実習は、ことごとく中止を余儀なくされた。そこで、試みられたのがウェブ会議システムなどを利用した「オンライン臨床実習」だ。緊急特集では、いくつもの実践例が報告された。

 仮想の症例を基に、ウェブ会議システムを利用して教員と学生がやりとりをしたり、教員が模擬患者役となってウェブを通じて模擬面接をしたりする。そもそも臨床実習は実際の患者に接して学ぶことであり、オンラインで行うのは限界があることは前提としつつも、コロナ禍という現状の中で学生が学ぶために何か工夫はできないかという、現場の試みだ。

 投稿された実践例では、オンラインで完全に置き換えられるものではないことは十分踏まえつつも、分野によっては「オンラインでもかなりの程度まで達成可能と思われる」との意見や、「個別に説明をできること、画面共有によって画像の細かな部分を説明できること」など、オンライン指導が向いている点もあることなどが述べられた。「これまでの臨床実習を見直して、より効果的で効率的な臨床実習のスタイルを検討する絶好の機会である」との意見もあった。

診療を通じて研修医にプロ意識

 投稿の中には院内感染が起きた病院からのものもあり、研修医の感染予防を図りつつ、研修とどう両立させるかの苦労なども述べられている。ただ、そんな中でも、これからのウィズコロナ時代においては、単に研修医を遠ざけることで新型コロナウイルスから守るという姿勢から、「いかに安全に研修医に経験を積ませるか」や「これまで研修が十分でなかった感染制御の概念を浸透させていく」ことを検討していく必要があることなどが提言されている。

 研修医が指導医の下で、新型コロナウイルス患者や救急の診療に携わっている病院の実践報告も複数ある。研修医の側も指導する側も、最初はやや戸惑う面があったものの、日々の経験を通じて「プロフェッショナルの表情」を見せるようになった研修医の姿がみられた例も報告されている。「新型コロナウイルスの脅威から研修医を守ることは、彼らを現場から遠ざけることではない」であるとか、「第一線に立ち診療するというプロフェッショナル意識も感じられた」など、研修医が新型コロナ禍という現実に向き合うことに、教育的な面でも意義を見いだした様子がつづられている。

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田村 良彦(たむら・よしひこ)

 読売新聞東京本社メディア局専門委員。1986年早稲田大学政治経済学部卒、同年読売新聞東京本社入社。97年から編集局医療情報室(現・医療部)で連載「医療ルネサンス」「病院の実力」などを担当。西部本社社会部次長兼編集委員、東京本社編集委員(医療部)などを経て2019年6月から現職。

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