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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

仕事のミスで同僚が陰口、落ち込む……元気を回復する方法とは?

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 社内で実施されたストレスチェック検査で、「高ストレス状態」と判断された金融機関の総合職の高山美幸さん(仮名、28歳)は、精神科産業医の面談を希望し相談室を訪れました。

仕事のミスで同僚が陰口、落ち込む……元気を回復する方法とは?

イラスト 赤田咲子

私(精神科医):面談を担当します夏目です。よろしく。まず「ストレスチェック検査の結果」を説明させていただきます。高山さんが「高ストレス」と判断されたのは、1、仕事の内容によるストレス 2、職場の人間関係がうまくいっていない 3、「落ち込み」や「不安」の症状が強く出ている……と言う点からです。

美幸さん:やはり職場の人間関係ですか。

私   :何かあったのですか?

仕事のミスをしてから、周囲の視線が怖い

美幸さん:お恥ずかしいのですが、仕事でミスをしてしまいました。会社に5万円くらいの損失を出して、2人に迷惑をかけて。自信をなくしました。部長は「この程度のミスは誰でも1、2回はするから、気にしないで」と言ってくれましたが。

私   :誰でもするようなミスですね。

美幸さん:それ以後、周囲の視線が怖くなってしまいました。

私   :そうですか。

美幸さん:しんどいのは、うわさ話や陰口ですね。悪口ばかり。「バカな社員。社の恥さらし。あんなミスをするとは……」と。

私   :考え過ぎではありませんか?

美幸さん:そうではないと思います……。元は明るいタイプなのですが、ますます自信をなくして引っ込み思案になってしまいました。

私   :それで。

本当に陰口をたたかれているのか?

美幸さん:つらいので、心の病気ではないかと思って、相談に来ました。

私   :うわさ話や陰口ですが、失敗を気にし過ぎると、陰口をたたかれているように思ってしまうこともありますよ。それを「念慮」と呼びます。一方、心の病気ということになると、うわさや陰口が全くの妄想という場合もあります。妄想と念慮の違いを整理してあるので見てください。

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私   :心の病気による妄想かどうかを判断するポイントは三つです。仕事のミスという理由があって、うわさや陰口、周囲の視線が気になるようになったのですから、妄想ではなさそうです。内容もあり得ないことはないでしょう。「絶対の確信」でなく、そう思う状態が続いているというくらいでしょうか。病的なものではなく、念慮ですね。

美幸さん:念慮ですか?

私    :詳しく言うと「敏感関係念慮」でしょう。過敏な人がミスなどをすると、人にうわさされ、非難されていると思い煩うことです。

美幸さん:気にし過ぎということですか。

周囲を気にして、明るいキャラを演じてきた

私   :踏み込んだ質問をします。高山さんは、自分を「明るいタイプ」と話していましたが、本当にそうでしょうか? なぜかと言えば、あなたの笑顔を見ていますと、作り笑いを感じます。いま女性に「スマイル仮面」が増えています。人に明るい印象を与えるために、笑顔を演じているのはないでしょうか。 

美幸さん:スマイル仮面!? 言われてみれば、意識して笑顔を作ることが多いかもしれません。

私   :人が自分をどう見ているかを気にする方では?

美幸さん:バレましたか……。本当は対人関係がとても気になる方だと思います。そう思われないように、大学生の頃から明るいキャラを演じてきたと言えば、そうかもしれません。

私   :過敏なんだ。

美幸さん:そうです。

私   :うわさ話や陰口のことですが、会社の部員全員ですか?

美幸さん:数人は心当たりがあります。全員ではありません。

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)
 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会前理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」。ブログ「ストレス点数の夏目」はこちら

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