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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

医療・健康・介護のコラム

汚れた空気も慢性上咽頭炎の原因 鼻うがいで汚染物質を除去

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汚れた空気も慢性上咽頭炎の原因 鼻うがいで汚染物質を除去

汚れた空気が粘膜上皮細胞のつながりを破壊する

 たくさんの異物から命の上流を守るために、体には様々な工夫が凝らされています。鼻や上咽頭の粘膜上皮のバリア機能は、鼻汁中の免疫物質だったり、線毛による異物の運び出しだったりする他にも、タイトジャンクションと呼ばれる細胞と細胞を強く結び付けている構造があります。これにより細胞間の隙間を縫って小さな異物が侵入してくるのを防いでいます。このタイトジャンクションが壊れると、くしゃみや鼻づまりといった鼻炎症状が悪化するのですが、空気中の汚染物質によって壊れることが分かっています。

鼻うがいで汚染物質を洗い流す

 40代のOさんは、気管支ぜんそくによる (せき) 、そして長引く (こう)()(ろう) が改善しないため、受診してきました。車修理工場が職場であり、職業性アレルギーも考えられるとして、ダニや動物の毛の他にも血液アレルギー反応を調べたのですが、当てはまるものがありませんでした。鼻づまりもひどく、吸入薬を使ってもあまり症状は良くなりません。風邪を引いてからは特に症状がひどくなり、内服薬も増える一方でした。

 こういうときには、慢性上咽頭炎が強く疑われます。Oさんの上咽頭を内視鏡で見ると全体的に腫れがひどく、ネバネバした後鼻漏もありました。一見して重症の慢性上咽頭炎と診断できましたし、治療後の出血もひどかったのですが、CRPは0.05mg/dl以下と炎症反応はありません。

 上流医療である鼻うがい、あいうべ体操などと一緒に上咽頭擦過治療(EAT)を続けたところ、2か月後には内服薬は不要になり、4か月後には治療をいったん終えることができました。

 Oさんの職場環境では、機械の作業や車の排気ガスから出てくる汚染物質によって、鼻や上咽頭のタイトジャンクションが破壊されたことが、長引く症状につながっていたと考えられます。鼻うがいで直接、汚染物質を洗い流せたことが良かったのでしょう。

苦しい鼻づまりはホットスチームで鼻を温める

 苦しい鼻づまりの時のセルフケアとして、ホットスチームがあります。43度くらいの温かい蒸気を当てると鼻粘膜の血管が収縮して、 ()(くう) 容積が一時的に広がります。鼻は24時間酸素を取り込むために、その機能を維持し続けなければなりません。時には「鼻にも働き方改革を」といきたいところですが、無理な話です。すこしでもきれいな空気で鼻に負担をかけない生活も上流医療ですね。

  後鼻漏や咳などがなかなか治らない場合は、住環境(たとえば幹線道路沿いの住宅)、職場環境などもチェックしてみて下さい。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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