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アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

脱走① 警察官に取り囲まれていた息子 いったい何が?…「二度と会えないかも」と思った日のこと

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壁の前の席を希望する理由

競争心はないが、逃げ足は速かった(特別支援学校中等部の運動会)

競争心はないが、逃げ足は速かった(特別支援学校中等部の運動会)

 そんな思い出もある空港や機内は、今の洋介には勝手知ったる場所の一つだ。しかし、10代前半まで、特に搭乗中は、家族にとって非常に緊張する時間だった。大きな声を出したり、前の席を蹴ったり、以前このコラムでも書いた「ツバ飛ばし」をしたりと、周囲に気を使うことばかり。さらに、密室で逃げ場もない。チェックインの時に療育手帳を見せるため、「お手伝いすることはありませんか?」と聞かれるが、優先搭乗などの必要はなく、ただ一つ、ほかの乗客に迷惑をかけないよう、「目の前が壁になっている席を」とお願いするのが常だった。

 離陸して最初の30分は空港で買った新しいおもちゃや絵本、それに飽きたら好きなおやつをバッグから出す。機内でもらえるおもちゃ(中学生の頃までもらっていた)や飲み物でつなぎ、それでも間が持たないときは、子ども向けの歌などを流す機内放送のイヤホンを耳に入れた。退屈がストレスになり、機内でパニックを起こすことがないよう、常に残りの飛行時間を気にしながら、羽田―福岡間の2時間弱をハラハラしながら乗り切っていたというのが実際だった。以前、取材で知った日本自閉症協会の阿部叔子さんが、息子さんと敢行したカナディアン・ロッキーの旅の経験を、著書「旅へ! 自閉症の息子らと―合言葉はノー・プロブレム」につづっているが、その頃の僕らにはとても考えられないことだった。

 祖父、祖母の順に他界し、実家も処分して、最近は洋介が飛行機に乗る機会はなくなってしまった。「次は、海外かな」とも思うが、いつもの福岡空港でなく別の空港に着いたら号泣して大騒ぎになったことも思い出し……。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

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梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

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