文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

がん死のほとんどが「遠隔転移」 防ぐには?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

未解明の遠隔転移 二つの仮説

 遠隔転移の仕組みは、まだ完全にはわかっていませんが、二つの仮説が考えられています。

 一つは、がん細胞に遺伝子変異が加わることによって、転移する能力(転移能)を獲得する可能性です。がん細胞が誕生するためには、数個の遺伝子変異が蓄積される必要があります。大腸がんでは、遺伝子変異を重ねる度に少しずつ、がんとしての能力(大きくなる能力や浸潤する能力)を獲得していくことがわかっています。だから、遠隔転移の場合も、転移能をもたらす遺伝子変異があるに違いないという発想です。しかし、今のところ、そういう遺伝子は見つかっていません。まだ見つかっていないのか、実はないのかはわかりません。ないことを証明するのは困難だからです。

放置するほど転移の確率は高まる

 もう一つは、遠隔転移をつかさどる遺伝子変異はそもそもない、という仮説です。原発巣から血中へのがん細胞の流入は最初から起きており、たいていは転移せずに終わるのだけれども、そのうちのほんの一部が、ある時たまたま転移するという考え方です。

 血流に乗ったがん細胞が遠くの臓器に漂着して増えるのは、実はとても難しいことなのです。血管に入ったがん細胞のほとんどは、途中で死ぬことがわかっています。しかし、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる……ではないですが、ずっと続けていれば、いつか転移が成立してしまう可能性は否定できません。

 二つの説のうちどちらが正しいにせよ、大事なことは、「がんを放っておけば、転移する確率は時間とともに高まる」ことです。早期発見・早期治療ががん治療の原則であるのは、そのためです。(中川恵一 放射線科医)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

nakagawa-keiichi

中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学医学部附属病院放射線科准教授、放射線治療部門長。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

中川恵一「がんの話をしよう」の一覧を見る

<PR情報>

1件 のコメント

コメントを書く

がん死に至る前のどこで病変を見つけるか?

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

癌の足場になる微小環境の議論があって、よくある体質改善の神格化に繋がりがちですね。 癌の転移も、原発巣が大きくなって破片がそのまま転移を起こすの...

癌の足場になる微小環境の議論があって、よくある体質改善の神格化に繋がりがちですね。
癌の転移も、原発巣が大きくなって破片がそのまま転移を起こすのか、悪性化するほどに転移しやすくなるのか、それ以外のなんらかがあるのかは文中にあるようにまだ研究中です。
重要なのは白黒はっきりつけ過ぎない物言いではないかと思います。
理由は例外事項は弱っている人には輝いて見えるからです。

癌の個性を生み出すのは、人間の個性、遺伝子の個性、生活環境の個性、科学の不確実性、その他諸々で、全ての癌が必ずしもセオリーに従ってくれるわけではないですが、多くの癌は早期発見し、原発巣や転移巣に主に標準治療やその亜型を用いてダメージを与えることで、多くの場合進行を遅らせることができます。
一方で、治療手段が局所や全身に与える影響はプラスだけではなく、まれに自然に消えるものやその他の例外も存在します。

ですが、多くの場合、早期発見に努め、癌や一般的な物事の学習、生活の整理などを進めたうえで、各種治療や無治療での経過観察などのオプションを持つことが多くの人にとってベターながん治療だというのは間違いないと思います。
これからの時代、相手が医師でも一方的に押し付けるように感じられたら不快に思われる患者さんもおられるでしょう。

新型コロナの状況下での運用は大変ですが、遠隔転移やリンパ節転移から原発巣がみつかることもあり、CTやMRIあるいは核医学検査のシステマチックな運用の重要性は増しているのではないかと思います。
目に見えると素人でもわかりやすいですから。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事