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妊娠・育児・性の悩み
不妊治療「次が最後」と決めたがコロナで中断 夫は再開反対
不育症も疑われ、転院繰り返し
Tさんはその後、2回の顕微授精を受けたものの、やはり妊娠しません。不育症も疑われ、その検査のため、別の病院へも通いました。検査の結果、不育症ではないだろうと言われたのですが、また別の病院を紹介されました。
「何件病院を変えればいいのか。その都度やり直しになる検査もあってお金がかかるし、気が遠くなりました。このころには、もう金銭感覚がマヒしてしまっていたと思います。治療費の総額を計算するのも怖くてやってない。これから、子どもの教育費とかもかかってくるし、この治療に使ってしまった分のお金があったら、もっと何でも買ってあげられるし、いろんなところに連れて行ってあげられたのに……。ごめんねって、罪悪感でいっぱいです」
治療がコロナで一時ストップ 夫と再開巡りけんか
そしてTさん夫妻は、「これ以上続けていても、いつまでと区切れないから」と、次の治療を最後にしようと話し合っていたそうです。そんな時期に、4月1日の 日本生殖医学会からのコロナに関する声明 が出ました。「病院は不要不急じゃないから大丈夫だろうと思っていたのに、私が通っているクリニックからメールが届いて、しばらく新規の治療は行わないとなってしまったんです。最後の1回で絶対頑張ろうと体調も整えて準備していたから、動転してしまって……」。その後、日本中が自粛体制となり、治療できないまま、2か月以上が過ぎてしまいました。
すでに学会からは5月18日、 治療再開の通知 も出ているのですが、Tさんの夫は「二人とも今テレワークなのに、わざわざ都内まで治療で通うのはリスクだ」と治療再開には反対で、けんかになってしまったそうです。「せっかくここまで頑張ってきたから、今あきらめたくない。何とか夫を説得します」と語ってくれました。
コロナ巡る不安に各学会が見解
Tさんのケースのように、病院選びに苦労をして転院を繰り返す方、また、コロナ渦の中、不妊治療のために通院に不安を抱えている方は多く、そうした悩みもよくきかれます。
ここでお伝えできる情報として、日本生殖医学会からは7月10日に「 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知~海外の動向について~ 」が出されています。また、日本受精着床学会からは「 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関するWebアンケート調査報告(速報) 」も出ており、クリニックが実施している感染症対策などもわかりますので、ぜひご参照いただければと思います。
また、NPO法人Fineでは、不安を抱える患者の気持ちを集めて不妊治療の環境改善に役立てるべく、「 withコロナ時代の妊活中の不安に関するアンケート 」と、「 どうする? 教えて! 病院選びのポイントアンケート 2020 」も行っていますので、よろしければ、声をお寄せください。
ニューノーマル時代であっても、患者が望む治療を続けられる環境が早く整うよう、患者も医療施設もこれまで以上の協力が必要となっていくでしょう。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長)
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