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ピック病(認知症)介護『父と私の事件簿』

医療・健康・介護のコラム

[コロナ編]歯ぐきの中に残った根っこが12本!? 80代認知症の父…医師は「誤嚥予防のため、抜きましょう」と言うけれど

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防護服を着た10人近いスタッフが

 

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 さて、少し遠いがタクシーでその病院に出かけると、防護服を着用した10人近いスタッフが診療室にいるではないか。「ひ~、なんでこんなに?」と思ったが、そこで治療している歯科医師が数人、大学病院から招いた医師、言語聴覚士、栄養士、歯科衛生士の方たちなどだ。ここでは日頃から、高齢者や認知症の専門外来の時間があるそうで、「認知症の高齢者の方は慣れていますから」と言われる。

 父が椅子に座ると、口の中の状況を確認、滑舌など言語聴覚の検査をし、飲み込みの音をマイクで聞く。そして、用意するように言われていた食事を使った嚥下状況の検査など、さまざまなことが行われる。緊急事態宣言の間は内視鏡検査ができないとのことで、それは後日となった。医師から「話しかけてあげて」と指示された歯科衛生士さんが、上手に話してくれるので、父は機嫌よく椅子に座り、結構しゃべっている。実は「もう帰る」と言い出すのではないかと不安だったのだが、どうやら持ちそうだ。

食事の手抜き ほめられ自信に

  その間、私には、栄養士さんから再び「父の日常の食事」についての質問があった。「とにかく、もう野菜は歯に詰まって食べられないようなので、朝にグリーンスムージーで飲む以外は、割りきって食べなくていいことにしています」と言った。怒られるかと思ったら、意外にも、「それはとてもいいと思います」と言われる。これからも自信をもって手抜きしよう!

 そんなこんなで1時間ほど。最後に医師から説明があった。意外なことに、げほげほのせきが出るのは、誤嚥しないように体が反応しているからで、むしろ正常に機能している証拠だそう。そして、父の飲み込む力はまだそこそこ大丈夫だが、今の入れ歯ではきちんと物をかめていないから、うまく飲み込めずに嚥下障害が出ているのだという。やはり「入れ歯はまったく合っていません」と言うので、それはずいぶん古いもので、「今、新しい入れ歯を作っています」と説明した。「高齢だと、新しい入れ歯を作っても、口のほうが合わせられないこともあるので、古い入れ歯をリフレッシュに出して使う手もある」と地元の歯科医師に聞いたことを伝えると、「いや~、これは使えないでしょう」と先生方は首をふる。そうなのか。

歯ぐきの下に歯の根っこが12本も!

  そして、衝撃的な事実が明かされる。父が入れ歯を置いている歯ぐきの中には、なぜか歯の根がそのまま残っているという。「その上にかぶった歯ぐきが、入れ歯と残った歯の根っこに挟まれ、かむときに痛みがあるのでしょう。ちゃんとかむためには、それを取り除くことが必要です」。それはつまり、根っこを抜くってことだ。ショックを受けながらも、「それはどのくらいあるのですか?」と聞くと、「かけらみたいなものも入れると12本かな」。

 そんなの無理だ。高齢で認知症の父に、根っこだけとはいえ、12本も抜くなんて。驚いてそう話すと、「いや、感染している根っこをそのままにしておくのはよくない。何より、このままではちゃんとかめない。われわれは高齢者をよく見ているので大丈夫ですよ」と説明された。

 いや、そうかもしれないけど、一度に2本ずつ取っても6回の通院。父は糖尿病だし、これから夏場に入って、治療のあとが () んだり、体調が悪くなったりすると困る。しかも、ささいなこととはいえ、この病院までタクシーで往復すると4000円。それに、高齢者の外来は毎日は開かれていないので、何か不具合が出た時、父が落ち着かなくなっても診てもらえない。そう考えると、私自身の負担も相当多そうだ。

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田中亜紀子(たなか・あきこ)
 1963年神奈川県鎌倉市生まれ。日本女子大学文学部国文学科卒業後、OLを経て、ライター。女性のライフスタイルや、仕事について取材・執筆。女性誌・総合誌などでは、芸能人・文化人のロングインタビューなども手がける。著書に「満足できない女たち アラフォーは何を求めているのか」(PHP新書)、「39.9歳お気楽シングル終焉記」(WAVE出版)。2020年5月、新著「お父さんは認知症 父と娘の事件簿」(中公新書ラクレ)を出版。

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