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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

オンライン業務や授業で目に被害…健康への影響を慎重に見極めよ

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オンライン業務や授業で目に被害…健康への影響を慎重に見極めよ

 新型コロナウイルス感染症の流行で、大人も子どもも生活様式が大きく変化してきた中で、「目の疲れ」や「視力低下」といった問題が出ていることが、各種調査や報道で注目されています。

 同感染症と共存可能な社会へとライフスタイルを変えましょうという掛け声で、テレワーク、オンライン会議、オンライン授業などでパソコンやタブレット、スマートフォンなどのIT機器の画面を見る機会が激増していることは間違いありません。

 眼球に病気がある人に対するこうした負担の影響は、想像以上です。

 ただ、大人の社会では、適宜休息を入れる、屋外に出かける時間を増やすといったある程度の調整が自身でできますが、児童や生徒は、自分で時間スケジュールを変更することはままならず、自由度は低いと思われます。孫たちの様子を見ていても、屋内にいれば、動画、ゲームなど、画面を見る近見(近いところを見る)作業の時間が明らかに増加していますし、オンライン授業が取り入れられれば、ほぼ近見ばかりの一日になります。

 さて、10年余り前の話です。ある民放テレビ番組の企画で、近見作業が目に与える影響を調べようということになり、私は眼科医として参加しました。

 実験は、幾つか部屋のある家屋を借りて行われました。18歳~20歳代前半の体育会系クラブの大学生の男女20人に被験者として協力してもらいました。まず二つのグループに分かれ、Aグループは1時間半の間、印刷物でも画面でも、もっぱら読む作業を続けてもらいます。Bグループは、読み書きはせず、談笑しても、横になっても、軽い運動をしてもよいことにしました。

 まず、実験前に全員の目の屈折状態を自動屈折計で測ります。屈折とは、各人が持っている近視、遠視、乱視の程度を調べるもので、自分の意思で変更できないので、客観的な数値が出ます。

 1時間半の規定時間が終わると、すぐに、再度、屈折状態を測定しました。Aグループの半数以上の人は近視化しており、うち2人にはマイナス2.5ディオプター以上(ディオプターは矯正度数の単位)と、かなりの近視化が生じました。調節緊張(近見のために毛様体筋の働きで水晶体をより凸レンズ化させることを調節といい、その状態が継続してしまうのが緊張)です。これに対しBグループでは近視化したり遠視化したりした方はいませんでした。

 調節緊張で屈折状態が大きく変化した2人には、その後30分以上目を休めてもらった上で再度測定しましたが、まだまだかなり近視化が残っていました。

 私は、グループ間に多少の差は出るかもしれないと思っていましたが、ここまで調節緊張が続くとは予想していませんでした。

 若い人は筋肉も水晶体も柔軟ですから、調節が変動しやすいという従来からの定説通り、近見によって容易に近視化したのを目の当たりにしました。しかし、その近視化が戻りにくかった人がいたのは私の想定外でしたので、特に強い記憶が残りました。柔軟性は主に近視化する方に強く働くが、それを戻す柔軟性はやや乏しい仕組みになっているということなのかもしれません。

 このような調節緊張状態で、緊張状態でない時に合わせたはずの眼鏡やコンタクトレンズを装用して視力を測ると、それは低下しています。近見作業時間を減らすとか、点眼治療を試みるとかの緊張状態に対する対応をしないと、冒頭に述べた子供の視力低下に結びつくことが懸念されます。

 オンライン授業や、外出自粛など生活様式の変化が、子どもや若者の視覚を含めた健康にいかなる影響を与えるか、大人たちは慎重に見極める必要があると考えます。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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