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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

夏に多い子どもの転落事故 窓の近くに家具(足場)を置かないで!

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死亡事故は主に6.7メートル以上から

 では、どれくらいの高さになると、危険度が高くなるのでしょうか。

 729人の転落による小児外傷を分析した研究 5) は、4.5メートル以下の高さからの転落では死亡率1%、4.5メートル以上だと2.4%としています。成人も含めた日本の古い研究(1994年) 6) では、2メートル以上の高所から転落した4歳から83歳までの34例(死亡13例)を検討したところ、高度が5階以下では死亡率が11%であるのに対し、5階以上では64%と、明らかに高くなることが報告されています。アメリカ小児科学会も窓・屋根・ベランダからの転落に関する声明を出していますが 4) 、この中で、死亡事故は主に子どもが高所(2階建て以上の高さ、または6.7メートル(約22フィート)以上)から落下したとき、または、子どもの頭がコンクリートなどの硬い表面に当たったときに発生しているとして、注意を呼びかけています。

 これらの事実を踏まえて、悲しい事故を防ぐための予防策について考えてみたいと思います。

室外機は手すりから60センチ以上離す

 東京都商品等安全対策協議会は、ベランダからの転落事故防止として、 次のような呼びかけを行っています

  • 子どもだけを置いて外出しない
  • 子どもを一人でベランダに出さない
  • ベランダを子どもの遊び場にしない
  • ベランダの出入り口を施錠する。子どもの手の届かない位置に補助錠を設置して施錠する
  • 網戸にも補助錠をつける
  • ベランダに足がかりになるものを置かない
  • エアコンの室外機は手すりから60センチ以上離して設置するか、上からつるす

 窓からの転落対策としては、 消費者庁が次のような呼びかけをしています

  • 窓の近くに足がかりとなる家具を置かない
  • 窓に補助錠やストッパーをつける
  • 窓の網戸やサッシが外れたり、破れていないか確認する

米キャンペーンで窓から転落83%減

 窓からの転落防止対策については、過去に米国で非常にうまくいった戦略があります。ボストンでは「Kids Can’t Fly」というキャンペーンが行われ、保護者への教育を進め、家主に窓ガード設置を義務化することなどを定めた条例が設けられました。この中で、次の5点が強調されています。

<1>全ての窓に鍵をかける
<2>家具や、子どもが登りうる全てのものを窓から離す
<3>窓は上から開け、下からは開けない
<4>窓ガードを装着する
<5>常に子どもを保護者の監督下に置くように心がける。

夏に多い子どもの転落事故 窓の近くに家具(足場)を置かないで!

窓ガードの例

 7歳以下の子どもがいる家庭では、2階以上の全ての窓と、1階であっても3.6メートル以上の高さにある窓には、窓ガードの装着が義務化されました。不動産管理会社もこのキャンペーンに積極的に関与したことにより、非常に大きな効果があり、開始から2年間で、ボストンの窓からの転落は83%も減少しました。 7)

 日本の転落事故も、その多くが窓からであることを考えると、窓ガードの設置をもっと積極的に検討してもいいのかもしれません。ただ、注意が必要なのは、火災時に脱出を妨げることがないよう、取り外しができるものでなくてはいけないことです。

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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