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医療・健康・介護のコラム
夏に多い子どもの転落事故 窓の近くに家具(足場)を置かないで!
最近、お子さんがマンションなどから転落する事故のニュースが続いています。調べた限りでも、5月に2件、6月に4件発生しています。6月の事故のうち3件ではお子さんの死亡が伝えられ、ニュースを見て胸を痛めていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。「何とか予防できなかったのか」「うちも高層マンションに住んでいる。ひとごとではない」などと思われた方もいらっしゃると思います。
今回は、子どもの高層階からの転落事故について、これまで分かっていることと、予防のために何ができるのかについて考えてみたいと思います。
ベランダよりも窓が危険
東京消防庁管内の救急搬送データ(平成23~28年)を消費者庁がまとめたところ、14歳以下の子どもが住居などの窓やベランダから転落・救急搬送される事故は218件発生していました。年齢別では、1~3歳が110件と約半分を占め、ベランダより窓からの転落が多い(窓154件、ベランダ64件)という結果でした。 1) よくベランダの事故がニュースになりますが、多いのは窓からなのですね。
季節では、春(3~5月)に59件(27.1%)、夏(6~8月)に71件(32.6%)と、多い傾向にありました。これは海外の報告 2) でも同様で、春や夏は窓を開け放つことが多いためと考えられます。この季節に立て続けに起きているのは偶然ではなく、毎年の傾向なのです。
2011~17年の厚生労働省の人口動態調査 3) から筆者がまとめたところ、14歳以下の子どもの転落死亡事故は、7年間に100件発生していました。年齢別では1~4歳が40件と最多で、10~14歳が36件、5~9歳は23件でした(ほかに0歳が1件)。亡くなっているのは1~4歳が最も多いのですが、10歳以上も多く、二つのピークがあることが分かります。これは海外の報告でも同様で、未就学児の事故は窓からの転落が多く、年齢が大きい子の事故は屋上や非常階段など危険な遊び場からの転落が多いことが分かっています。 4)
男の子の方が高い転落リスク
1990年から2008年の19年間に米国全土で発生した17歳以下の窓からの転落事故9万8000件を分析した研究 2) では、転落の平均年齢は5.1歳で、6割が男児でした。他の事故同様、男の子は転落のリスクが女の子よりも高いようです。0~4歳児は5~17歳児と比べて頭部外傷の割合が3.2倍と高く、入院や死亡も1.6倍でした。小さなお子さんほど体重に占める頭の割合が大きいため、転落時に頭が下になり、頭のけがが起こりやすく、重傷になりやすいと考えられます。また、着地面の比較では、硬い地面(コンクリートやアスファルト面)に着地した場合、軟らかい地面(茂みや花壇、樹木)への着地と比べ、頭部外傷が2.1倍、入院・死亡リスクも2.2倍でした。これは予想通りですが、マンションの着地面に何か対策ができるとリスクを減らせるかもしれませんね。
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