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中川恵一「がんの話をしよう」

医療・健康・介護のコラム

がん患者の25%「新型コロナが治療に影響」 免疫力が下がる治療、下がらない治療

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 世界保健機関(WHO)は6月1日、新型コロナウイルスの感染拡大による医療への影響を発表しました。77%の国が、新型コロナの感染拡大で他の病気の治療が影響を受けたと報告しており、がん治療に影響があったと答えた国が42%に上りました。

 中国からの報告では、新型コロナウイルス感染者の死亡率は心血管疾患10.5%、糖尿病7.3%、慢性呼吸器疾患6.3%、高血圧6.0%、がん5.6%とされています。がんは他の病気と比べて、とくにコロナ感染が致死的になりやすいわけではありませんが、治療には大きな影響が出ました。

4人に1人が「治療に影響」

 新型コロナウイルスの院内感染が広がった医療機関では、手術などの延期が相次ぎ、患者さんの間で不安が広がりました。そんな現状を裏付ける調査結果も発表されています。女性のがん患者が参加するネット患者会「ピアリング」が4月19~25日、ネットで1101人に調査したところ、手術延期などの影響を受けた人は約4分の1に上ったそうです。一時、およそ8割の手術延期が報じられたがん研有明病院のケースは、決してひとごとではないのです。

 調査では、「がん治療に関して影響を受けている」は272人(24.7%)。具体的には、「(化学療法など)治療の遅延」が46人、「検査の遅延」が29人、「乳房再建の遅延」が27人、「手術の遅延」が19人と遅延の状況は多岐にわたります。医療機関側の事情による「診察の延期」は41人ですが、「感染への不安から、自ら通院予定を延期」した人も57人います。

 がん患者や医療者など582人に対する国内の別の調査でも、参加者の2割以上が、すでに「がん治療や手術において、新型コロナの影響を受けている」と回答しています。さらに、6割近くの人が、「影響を懸念している」と答えています。

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中川 恵一(なかがわ・けいいち)

 東京大学大学院医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。
 1985年、東京大学医学部医学科卒業後、同学部放射線医学教室入局。スイスPaul Sherrer Instituteへ客員研究員として留学後、社会保険中央総合病院(当時)放射線科、東京大学医学部放射線医学教室助手、専任講師、准教授を経て、現職。2003~14年、同医学部附属病院緩和ケア診療部長を兼任。患者・一般向けの啓発活動も行い、福島第一原発の事故後は、飯舘村など福島支援も行っている。

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