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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

なぜ「ペットと暮らせる特養」なのか 動物愛護活動?

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 これまで、余命3か月で入居した伊藤さん(仮名)と愛犬のチロのエピソードに、 ()() り犬・文福のエピソード、そして愛猫の祐介君と一緒に入居した後藤さん(仮名)のエピソードと、三つのエピソードを書いてきました。ここまでお読みいただいた方は、私が経営する特別養護老人ホームさくらの里山科で、ご入居者様とペットがどのように暮らしているのか、何となくイメージはつかめたのではないでしょうか。

高齢者のQOL向上へ「あきらめない福祉」

なぜ「ペットと暮らせる特養」なのか  動物愛護活動?

 ではここで、そもそも私たちは何を目指して、ペットと暮らせる特別養護老人ホームを運営しているのかをお話ししておきたいと思います。

「なぜ、特別養護老人ホームで、動物愛護活動をしているのですか?」

 これは、しばしば福祉関係者から聞かれることです。それに対して私は、動物愛護活動はしていません。私たちは高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指しているだけです、と答えています。

 高齢者のQOLの向上を目指してうまれた、うちの法人のスローガンは「あきらめない福祉」です。例えば旅行が大好きなのに、旅行に行くのをあきらめている高齢者はとても多いのです。私たちはそのような方を、介護しながら旅行にお連れします。そのため、うちのホームでは旅行行事がとても多いです(これはコロナ前の話です。現在は旅行行事は中止しています)。お買い物をあきらめていた高齢者のために、週に1回、パン屋さんや食料品店さんに来てもらい、ホーム内売店を開設しています(同じく現在は中止中です)。外出行事でショッピングセンターに行くこともあります。

おいしいもの お酒 毎日のお風呂…

 おいしいものを食べるのをあきらめていた方には、私たちが食事介助しながらおいしいものを召し上がっていただきます。実は、うちのホームの最大の特徴は、ペットと暮らせることではなく、食事の質の高さだと自負しています。伊勢エビやフグ、マツタケなどのぜいたくな食事も出しますし、ラーメンやお好み焼きなどの庶民的な料理も出します。エスニック料理すら出すんですよ。

 少数ですが、毎日、お酒を飲むご入居者様もいます。やはり少数ですが、毎日お風呂に入るご入居者様もいます。もちろんそれぞれ、ドクターの許可があればですが、お酒を飲むことも、お風呂に毎日入ることもあきらめずに済むよう支援しているのです。

 同じように、ペットと暮らすことをあきらめずに済むよう、ペットと一緒に暮らすことの支援をしています。ですから、私たちは動物愛護活動をしているのではないのです。高齢者のQOLを向上させるために、ペットと一緒に暮らせる体制を作っているのです。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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1件 のコメント

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愛犬との別れ

にっ子ちゃん

愛犬はトイプードル名前は愛です。ちょうどひと月になります。 今でも思い出せば涙がでますが。15年間一緒に住み、私たちは共働きで昼間はいつも一人で...

愛犬はトイプードル名前は愛です。ちょうどひと月になります。
今でも思い出せば涙がでますが。15年間一緒に住み、私たちは共働きで昼間はいつも一人でお留守番しておりました。まだおばあちゃんがいっしょの時はよかったのですが、2年前におばあちゃんが施設に入ってからは寂しかったと思います。
最後は肺がんで見てるのがつらくてつらくて、愛もしんどかったと思います。
でもさいごの最後までおしっこはゲージで、おしめ等着けることもなく静かに息をひきとりました。今でももう一度ワンチャンを飼いたいと思いますが私たちも年です。
最後まで看取れないので今は半分あきらめております。

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