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「教えて!ドクター」の健康子育て塾

医療・健康・介護のコラム

うちの子、大丈夫?…ママが悩む包茎 「炎症繰り返す」「尿がまっすぐ飛ばない」などは治療を

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 診察室でお子さんを診察した後、お母さんから「最後にちょっといいですか?」と切り出される相談があります。「直接、関係のない話なのですが……」「お兄ちゃんの話なのですが……」などの枕ことばが付くこともあります。

 それは包茎の悩みです。

 よく聞かれるのは、「将来のために、親が皮をむいてあげた方がいいのですか?」とか、「包茎のままだと、菌が付きやすくなったりしませんか?」といったことです。特に母親は、異性の問題なのでよく分からず、余計に不安になるのかも知れません。今回は「子どもの包茎、どうすればいいの?」にお答えしたいと思います。

よく相談される「うちの子、包茎なんです」 炎症繰り返す、尿がまっすぐ飛ばない…などは治療が必要

イラスト:江村康子

アメリカでは新生児期の手術が一般的だが…

 私の知人の子どもがアメリカの病院で出産したとき、赤ちゃんは、当たり前のように包茎の手術(環状切除)を受けたそうです。アメリカでは新生児期に包茎の手術をしてしまうことが一般的で、その理由として、感染予防が挙げられているようです。確かに、「新生児期に手術をしていない子どもは、手術をした子どもと比べて尿路感染を起こしやすい」という海外の報告があります。 1) また米国小児科学会も、「新生児期の手術(環状切除)は合理的だ」という声明を出しています。 2)

 そんな話を聞くとなおのこと、息子の包茎を放っておいても大丈夫?となるのはもっともかもしれません。ただ、尿路感染症など予防可能な病気の頻度は、新生児期に敢えて手術を行う必要があるほど高くはないと、日本の医療界では考えられています。私もそう思っています。

 ここからは個人的な意見です。米国小児科学会の声明は、文化的な背景も考慮しているのではないかと感じます。つまり、「効果があるから、今後は積極的にやりましょう」というより、これまで新生児期に手術を行ってきた伝統に対して、それは合理的だと許容する側面も大きいのではないかと思っています。調べてみると、ユダヤ人やイスラム教徒、オーストラリアのアボリジニーにも、子どもが小さいときに包茎の手術をする習慣があるようです。 3) ただ、ちょっと不思議な点もあります。例えば、有名なミケランジェロのダビデ像は包茎ですが、彼はユダヤ人です。どんな歴史的背景があるのでしょうか? なかなか興味深いですね。

 少し脱線しました。繰り返しますが、手術をする習慣がない日本などの国で、感染症予防のために新生児期の手術(環状切除)というステップに進むのは、慎重に考えた方がよいかと思っています。日本の専門家の多くも、予防目的での乳幼児期の治療には慎重です。 4)

全て露出するのは11~15歳で63%

 包茎とは、包皮(陰茎の先端で折り返し亀頭をかぶっている部分の皮膚)がむけず、亀頭が露出できない状態のことを指します。出生時はほぼ100%が包茎の状態とされ、成長に従って、包皮と亀頭の間にある癒着が次第にはがれていきます。亀頭が全て露出するのは生後6か月で5%未満、11~15歳で63%とされています。 5) つまり包皮は、思春期に向けて少しずつむけていくのですね。

 そこでよくある相談、「むいてあげた方がいいのですか?」にお答えしたいと思います。

 感染症を予防するためには、お風呂に入ったときにしっかりむいて亀頭を露出させ、洗ってあげた方がよいのでは?と思っている方も少なくありません。しかし、無理にむいてしまうと包皮が傷つき、出血することがあります。これを繰り返すと、包皮がかえって硬くなり、さらにむきにくくなるためやってはいけません。清潔にするにはシャワーで洗い流すだけで十分で、無理に露出させる必要はありません。

 心配しなくても、小学生になるまでに亀頭の一部は自然に見える状態になります。思春期にかけ、多くの場合、亀頭の大部分が見える状態になります。小児の包茎は、自然に改善するのを待つのが基本方針です。

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坂本昌彦(さかもと・まさひこ)

 佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長
 2004年名古屋大学医学部卒。愛知県や福島県で勤務した後、12年、タイ・マヒドン大学で熱帯医学研修。13年、ネパールの病院で小児科医として勤務。14年より現職。専門は小児救急、国際保健(渡航医学)。日本小児科学会、日本小児救急医学会、日本国際保健医療学会、日本国際小児保健学会に所属。日本小児科学会では小児救急委員、健やか親子21委員。小児科学会専門医、熱帯医学ディプロマ。現在は、保護者の啓発と救急外来の負担軽減を目的とした「教えて!ドクター」プロジェクトの責任者を務めている(同プロジェクトは18年度、キッズデザイン協議会会長賞、グッドデザイン賞を受賞)。

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