アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直
医療・健康・介護のコラム
父は何度でもプールサイドを走る…3年通った水泳教室を退会させられた理由
この季節、洋介が楽しみにしているのがプールだ。海も大好き。水を怖がらないどころか、なんと泳げるのである。といっても、クロールや平泳ぎができるわけではない。あおむけにプカーっと浮かんで、気ままに漂っている。気が向くと、寝返りのようにクルっと一回転して、笑っている。「ラッコか!」と思う。
唯一、長続きした習い事
3歳から小学校に入るまで、洋介は様々な習い事に通った。言葉の発達を促す療育施設はもとより、音楽教室やリトミック、ショッピングセンターの中にあった幼児教室など。大量の単語を口にしていた2歳のころから、だんだんと失われていった言葉が、何かのきっかけで戻ってくるのではないかという親の勝手な期待のため、この頃の洋介はかなりハードスケジュールを強いられていた。
「ちょっとでも刺激になれば」と単純に考えたわけだが、目に見える変化は表れず、長続きしなかったものがほとんど。そのなかで唯一、洋介が気に入って毎回行きたがったのがスイミングスクールだった。
4歳で入会したときから、ほかの子のように、指示通り動くのは難しかった。それでも、インストラクターが洋介の状態を理解して、気長に付き合ってくれるのがよかった。普段から体に力が入り、緊張で硬くなることが多いのは、自閉症スペクトラムの特徴の一つでもあるが、見学席のガラス越しに見る水中の洋介は、いつもの緊張が和らいで、いい表情に見えた。「選手コース」に進むのが目的ではなかったので、楽しく1時間、過ごせればよかった。
「もう、来ないで」と言われ
ところが、時間がたつにつれ、同い年の子たちはそれぞれに上達し、上のクラスに移っていく。代わって、さらに小さい子たちが入ってきては、また進級していく……ということを繰り返すうちに、いつの間にか、幼児クラスの中に、ひと際、座高の高い洋介が交じっているという絵面になっていた。
さらに、その頃、再び 排泄 がうまくいかなくなっていた。パンツから紙パンツに逆戻りし、更衣室では、ほかの親に見られないように注意したが、すぐにバレた。何度か、プールで大きい方をもよおす“事件”があり、「もう、来ないで」とスクールから断られたのは、通い始めてから3年もたった頃だった。長い間、洋介の個性に合わせて指導してくれたスクールだったから、決して「厄介払い」という意味合いではなかったと思う。ほかの保護者たちからの要求を聞くしかなかったのだろう。
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