文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

毎日を日常として送れる奇跡に感謝

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

1回5時間、週3回の人工透析を33年

透析中の宿野部さん

 「へぇ。宿野部さんはその腎臓が働かないから、透析が必要になっているのですよね?」

 透析という言葉は時々耳にする。

 腎臓に病気があって十分に働かなくなると、おしっこがうまく作れなくなり、老廃物が血液にたまってしまう。それを医療の力を借りて人工的に腎臓の働きをする治療のことだ。宿野部さんは週に3回クリニックに通い、人工透析をしているという。1回あたり5時間ほどかかり、ベッドにいなければならないそうだ。

 見た目は、そんな大病をしているようにはまったく見えない。

 彼の病気との付き合い方にも興味がわく。

 「透析を始めてどれくらいになるのですか?」

 宿野部さんは、週3回の人工透析を受けるようになって、もう33年以上になるそうだ。それが日常になっているのだろうが、毎回クリニックに通い、透析中は針が刺さっているためベッドからは動けないという。正月でも荒天でも通わなければならないとは、想像しただけでもつらそうだ。

水分摂取量を管理 腕にはサポーター

毎日を日常として送れる奇跡に感謝

オンラインで対談する宿野部さん(左)とのぶさん

 宿野部さんにもっと深く尋ねたくなってきた。

 「日常生活ではなにか気を付けることはあるのですか?」

 腎臓が働かないためおしっこが今ではほとんど出ないので、水分の摂取量を常に考えているらしい。そういえば、私のカフェに来た時も、水にはほとんど手を付けない。

 そして、透析の際に針を刺す腕の部分を傷めないように、常に気を配っているという。確かに、腕にはサポーターをしている。

 私は、これほど厳密に水分摂取量を管理したり、腕を傷つけないように配慮したりすることなど、考えたことがほとんどない。私が彼に提供したコーヒー1杯も、彼にとっては深く考えねばならない水分量だといえる。そう考えれば、毎日を日常として送れることは奇跡であり、その体に感謝の気持ちにもなる。

自分の体をしっかり見つめて

 「でも、自分の体をしっかりと見つめ、すべきことを考え、医療者とともに病気に向き合っていけば、透析を受ける体であっても、日常生活は送っていけるんですよ」と、宿野部さん。確かに、宿野部さんはいつも明るく、楽しく過ごしているように見える。

 どうすれば、自分の体と向き合っていけるようになるのだろうか。

 「そういえば、宿野部さんは透析を受けている方のための団体を運営されているんでしたよね?」

 彼が代表理事を務める、一般社団法人ペイシェントフッドは、透析を受けている方を支援している団体だと聞いた。

 「そうですね。その前に、モンブランありますか?」

 宿野部さんが追加の注文をくれた。

(この項続く)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

suzuki_nobuyuki_300-300i

鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事