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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

「腫瘍内科」って何?…がんの薬物療法を行い、患者さんの道案内役となる

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 皆さんこんにちは。腫瘍内科医の高野利実です。

 「腫瘍内科」という言葉は、私が医者になった22年前には、医者の間でもあまり知られていませんでしたが、最近は、巷でも「聞いたことはある」という方が多くなってきました。

テレビドラマの主人公に

「腫瘍内科」って何?…がんの薬物療法を行い、患者さんの道案内役となる

 今年のはじめには、フジテレビ系列で、腫瘍内科医が主人公のドラマ「アライブ がん専門医のカルテ」が放送され、話題になりました。「腫瘍内科」がなかった日本で、道なき道を歩んできた私としては、「腫瘍内科」という言葉が浸透しつつあることを、とても感慨深く思っています。

 でも、「腫瘍内科って何?」「腫瘍内科医って何してるの?」という質問は、今もよく受けます。腫瘍とは「がん」のことですので、腫瘍内科とは、「がんを診る内科」になります。外科医が手術を行い、放射線科医が放射線治療を行うのに対して、腫瘍内科医は、主に、「薬物療法」を担当します。抗がん剤、ホルモン療法、分子標的治療、免疫療法などの薬物療法をうまく用いて、がんを制御するとともに、症状を和らげるお薬で、がんの症状や治療の副作用を抑えて、できるだけいい状態で過ごせるようにします。

 近年、がんに対する薬物療法の種類は増え、治療成績も向上する一方、さまざまな副作用に対して慎重な対応が求められるようになり、薬物療法を専門とする腫瘍内科医の必要性は高まっています。

患者さんとともに歩んでいく

 腫瘍内科医は、薬物療法を行うだけでなく、もう一つ大事な役割を担っています。それは、「患者さんの道案内役」です。がんという病気やその治療と向き合う患者さんは、つらい症状や不安にさいなまれ、日常や仕事の調整にも追われ、心が折れたり、道に迷いそうになったりすることもあります。そんな患者さんに対して、ただ薬を処方するだけではなく、道案内役として、ともに歩んでいくのが、腫瘍内科医の重要な仕事です。

 今年は、新型コロナウイルスが世界中に影響を与え、それは、がんの患者さんにも、医療のあり方にも強い影響を与えています。がんと向き合うだけでもいっぱいいっぱいなのに、新型コロナウイルスでさらに不安が増し、世の中の重い雰囲気に押しつぶされそうになっている患者さんもたくさんいると思います。道案内役であるべきわれわれ腫瘍内科医も、先行きを見通せないような状況ですが、患者さんとともに考え、悩みながら、「一人ひとりの患者さんにとって大切なもの」は見失うことのないように、一歩一歩進んでいければ、と思っています。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)や、「気持ちがラクになる がんとの向き合い方」(ビジネス社)がある。

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