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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

新型コロナ規制緩和 急いては事をし損じる

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緩めたり締めたり 微調整が大切なのに……

新型コロナ規制緩和 急いては事をし損じる

英ロンドンで6月15日、再開した老舗百貨店ハロッズを訪れる買い物客=広瀬誠撮影

 急(せ)いては事をし損じる、過ぎたるは及ばざるが如(ごと)し、逃げるは恥だが役に立つ……。最後のは関係ないですが(再放送、面白いねー。録画しておいて、朝のジョギング後のストレッチ・筋トレしながら楽しく見てます)、最近は国内外での「緩み」のスピード加速がヤバイ状態になっています。

 前回 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20200528-OYTET50009/?catname=column_iwaken申し上げたように、新型コロナウイルスとの対峙(たいじ)は、「緩めたり、締めたり」の微調整にあります。慌てて緩めすぎてしまうと、そのバックラッシュがきつくて、また厳しい自粛を強いられてしまいかねません。

 ヨーロッパではロックダウンによる患者の減少効果が顕著で、どの国も街の活動の制限解除に向かっています。その一方で、例えば ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州ではCOVID-19の集団感染が発生して、再度ロックダウンを行わざるを得なくなってしまいましたhttps://www.cnn.co.jp/world/35155846.html

「ロックダウンは意味がない」はデマ

 そうそう、最近「ロックダウンなんて意味がない」というデマを飛ばす人も増えてきました。

 そもそも、このコロナの問題は「デマを飛ばす人たち」の増殖問題でもあります。もちろん、新しいウイルスによる初体験のパンデミックですから、「未知の領域」は多々あります。多くは証明されていない「学説」の範囲内であり、それが「学説」「仮説」であると明言されている限り、それは決して「デマ」ではありません。

しかし、確信犯として根拠のないデータを「これが正解だ」と断言するのはデマです。もっと質(たち)が悪いのは、根拠のないデータを、自分自身で「正しいデータ」と確信したまま流されるデマですが。悪意の誤謬(ごびゅう)よりも、善意の誤謬のほうが恐ろしい所以(ゆえん)です。

 で、ロックダウンですが、めちゃめちゃ効果あります。めちゃめちゃ効果あります(関西人風に2度繰り返してみました)。英国、スペイン、フランス、イタリアを対象とした研究では、ロックダウン以降感染が激減していることが示されています(Flaxman S, Mishra S, Gandy A, Unwin HJT, Mellan TA, Coupland H, et al. Estimating the effects of non-pharmaceutical interventions on COVID-19 in Europe. Nature. 2020 Jun 8;1‐8. https://www.nature.com/articles/s41586-020-2405-7_reference.pdfリンクに飛んで図1(Fig.1)の左側を見ていただければ、ロックダウンで感染が激しく減っていることが一目瞭然で分かります。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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2件 のコメント

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新型コロナ下での不要不急のイベント

寺田次郎 六甲学院放射線科不名誉享受

医療と政治経済の側面から言って、開催はとりあえずOKだと思います。 とりあえずが大事で、今後の状況確認やより良いアイデアも大事です。 政府や市町...

医療と政治経済の側面から言って、開催はとりあえずOKだと思います。
とりあえずが大事で、今後の状況確認やより良いアイデアも大事です。
政府や市町村の強制力のある指示があれば中止は当然ですし、これまでよりも弱い参加強制力や多様な参加形態であることが望ましいので、柔軟な開催プランが必要とされると思います。

OKである論拠は新型コロナウイルスの特性と現在における科学と政治の兼ね合いです。
今の時点で新型コロナウイルスは感染そのものを完全には防ぎようがなく、病態解明の時間稼ぎと救急ひっ迫を回避の為に感染速度を遅らせているだけです。
そして、ワクチンや特効薬は今の時点で完全な見通しはありません。

1-2年延期してもコロナの勢いが収まっているとは限らず、1-2年経ってご高齢や各種因子をお持ちの方が別の感染経路や別の理由で亡くなる可能性があります。
その人たちの気持ちやそれ以外の人も含めた気持ちや慣習の持つ経済効果は無視できないものがあります。

ここで、場合分けが発生するわけですが、今後、緊急事態宣言も経済活動との綱引きとなるでしょう。
他の案件でもリスクがある生活を送る状況にあれば、あるイベントに強く参加の意思のある人だけでこじんまりやる事がコアにあって、それ以上は流れ次第でいいのではないかと思います。

今の時点では、既往歴のある患者と一部の患者に重症化を起こす呼吸器を中心とした発熱疾患という認識なので、その認識や診断治療戦略が大きく覆らない限り、経済活動との綱引きで徐々に制限が解かれる中でやっていけばいいと思います。

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感染発生源講評

norinori

ここにきて、感染者数が毎日多く発表されています。 それも特定の箇所で起きているようです。 例え方がどうかと思いますが、食中毒などの場合には発生源...

ここにきて、感染者数が毎日多く発表されています。
それも特定の箇所で起きているようです。
例え方がどうかと思いますが、食中毒などの場合には発生源が発表され、一定期間営業停止になります。新型コロナウイルスの場合は、発生源の許可がないと発表できないというのは、おかしい気がします。発表されるようになれば、発生源のところでも発生しないように従業員たちの管理を行い、発生しないように注意するのではないでしょうか。

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