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コロナ対策 「知を結集して」…専門家会議副座長を務めた 尾身茂さん

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 新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて提言を重ねてきた政府の専門家会議が廃止され、感染症以外の専門家も幅広く加わる会議体が発足することになりました。専門家会議の副座長を務めた尾身茂・元世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長にこれまでの経緯と、今後の見通しを聞きました。

コロナ対策 「知を結集して」…専門家会議副座長を務めた 尾身茂さん

インタビューに答える尾身茂さん(25日、東京都港区で)=萩本朋子撮影

異例の対策案提示

 ――2月中旬から専門家会議は「前のめり」になったと振り返りました。なぜですか?

 「感染経路がわからない感染者が、複数の地域で出始めたためです。無症状の人からも感染するという情報を中国から得ており、封じ込めの難しいウイルスだとわかっていました。国内でも水面下で感染が広がっているのではないか。何とか社会に発信しないと間に合わない。皆、感染症対策の専門家として生きてきた危機感、責任感がありました」

 「毎晩遅くまで専門家会議のメンバーで情報交換し、激論も交わされました。2月24日、『ここ1~2週間が瀬戸際』という見解を発表した時は、ルビコン川を渡った感じはありました。通常の審議会は、政府が示す案に意見を述べるもの。自ら対策案を提示するのは異例でした」

 ――4月7日に緊急事態宣言が発令されました。

 「みるみる感染者が増えて重症者で病院が埋まり、医療現場から『悪夢を見ているようだ』との声が上がっていました。ぎりぎりのタイミングでした」

 ――新規感染者は宣言前に減少に転じており、効果を疑問視する声もあります。

 「感染から報告まで遅れがあるため、振り返ってわかったことです。海外の状況を見ても、あの時点では他に選択肢はなかった。実際に緊急事態宣言の発令後、1人の感染者が周りにうつす人数(実効再生産数)はさらに下がりました。5月も延長されましたが、我々も十分抑えておかないと、後で問題が起きると考えた。オーバーだったかどうかは現時点で判断できませんが、一定の効果は間違いなくあったと思っています」

政府が決断最善

 ――今後の見通しは?

 「地域で再び感染経路不明の感染者が出ているのが気がかりです。どういう状況で感染したかは非常に重要。調査の充実が課題です」

 「一方、検査や接触確認アプリなどの技術革新があり、医療提供体制も変わりました。3密を避けるなど個人でできることもあります。社会全体でなく、クラスター(感染集団)が起きそうな場所での接触の削減をすれば、感染拡大が抑えられるという分析も出ました。工夫次第で再び『接触8割削減』をしなくても済む可能性はあります」

 「4か月、疾走してきましたが、助言組織のあり方も変わらなければいけません。本来、感染症の専門家が素早く技術的な分析をして政府に報告し、政府が様々な観点から政治的な決断をするのが最善の形です」

 「感染症対策は、常に社会への影響を考える社会科学。経済活動を維持することの大切さも心底わかります。立場が違えば意見も違うのは当たり前。今後は、様々な領域の知が結集して、政府へ助言する体制ができると良いと考えています」

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