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感染きっかけ 全身に炎症…敗血症 早期治療で救命

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 敗血症は、細菌やウイルスへの感染をきっかけに全身に炎症反応が広がり、臓器障害を引き起こす病気だ。国内では年間約10万人が亡くなっていると推計される。新型コロナウイルスでも発症する。死亡率が高いが、早期に発見できれば、救命の可能性が高まる。(西原和紀)

感染きっかけ 全身に炎症…敗血症 早期治療で救命

  多症状 難しい診断

 敗血症の原因となる病原体は、主に肺炎球菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌などだ。

 最初に感染する部位は、肺などの呼吸器系が最も多く、尿路や腸管の感染も目立つ。けがで皮膚から入った細菌で発症することもある。

 最初は一つの部位にとどまっていた炎症も、病原体が血液中に入って全身に広がったり、病原体を排除しようと免疫反応が過剰に働いたりすれば、臓器障害が起きて、敗血症になる。

 臓器障害には、敗血症性脳症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性腎障害、腸管機能障害などがある。

 治療は一刻を争う。集中治療室(ICU)で感染症の治療と、血圧や呼吸などの全身管理をほぼ同時並行で行う。

 敗血症は急速に悪化する。重症化して、点滴治療をしても低血圧が続く「敗血症性ショック」が起きると、30~50%の患者が死亡する。複数の臓器が十分に機能しなくなる「多臓器障害」で死に至ることもある。

 病原体の種類や、どの臓器で障害が起きているかによって、症状が異なる。

 初期段階では他の病気と見分けがつきにくく、診断が難しい場合も多い。呼吸数や血圧、意識障害などに基づいて判断する。

  後遺症 長いことも

 症状の特徴やコンピューター断層撮影法(CT)の画像などから、原因となっている感染症を特定する。抗菌薬を投与したり、患部を切除したりする。全身管理では点滴や血管収縮薬の投与、酸素吸入のほか、人工呼吸器や人工透析が必要なこともある。

 回復しても、運動機能や認知機能の低下、精神的な不安といった後遺症が長く残ることもある。

 敗血症の認知度は低い。日本集中治療医学会と日本救急医学会、日本感染症学会の3学会は昨年8月、啓発活動に力を入れるため、「日本敗血症連盟」を結成した。「予防して早く発見、早く治療」を呼びかける。

 感染症になれば、誰もが発症する可能性がある。特にリスクが高いのは、65歳以上の高齢者や、糖尿病などの持病があり免疫力が低下した人、1歳未満の乳幼児だ。

 敗血症を疑うサインも知っておきたい。〈1〉38度以上の発熱〈2〉36度以下の低体温〈3〉脈が速い(心拍数が1分間に90回以上)〈4〉呼吸が速い(呼吸数が1分間に20回以上)〈5〉意識低下〈6〉全身のむくみ〈7〉血圧が低い〈8〉手足が冷たい――のうち、二つ以上に当てはまれば要注意だ。

 大阪大学高度救命救急センター准教授の小倉裕司さんは、「治療が遅れるほど、救命率は下がる。ふるえや息切れ、意識の低下などに周囲が気付くことが重要。いつもと違うと思ったら、迷わず医療機関を受診してほしい」と話している。

 感染症の予防が、敗血症の予防にもつながる。手洗いの徹底やワクチン接種などが重要だ。

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