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鶴若麻理「看護師のノートから~倫理の扉をひらく」

医療・健康・介護のコラム

18トリソミーのわが子「命が短いなら早く自宅へ」…新型コロナで面会制限された両親をどう支えるか

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「面会制限すべきではない」との結論に

 子どもへの治療については、親と医療者で一緒に考えていくことになります。面会制限をすれば、親のわが子に対する思いや今後への考え方が形作られにくく、そのために「医療者側の価値観が優先されてしまいかねない」と心配したそうです。

 そこで看護師は、主治医と相談した上で、スタッフと話し合う場を持ち、「この女児があとどれくらい家族と過ごせるのか」「手術のリスク」「治療の選択をするのは親であること」などを確認しました。そして、在宅ケアへの移行を希望する両親がわが子の状態を理解し、育児に備えるためには、「面会は制限すべきではない」との合意にいたりました。このような医療スタッフ間での話し合いは、互いに疑問に思っていることを伝え、よりよいケアについて考えるための重要なプロセスです。

NICUの「面会ノート」は何のためにある?

 新型コロナウイルスの感染防止策として、不要不急の面会が制限され、親が新生児とあまり面会できない、医療スタッフと話す機会も減る……という状況が生じています。その中で、「面会ノート」の役割が再認識されているそうです。

 NICUでは、面会ノートというものを作っています。各病院によって名称は様々かもしれません。面会ノートは、親とスタッフが子どもの成長・発達の記録を記すもので、親は面会した時の気持ちなども記入します。この病院では、面会制限するのに伴い、希望する親にSDカードを準備してもらい、子どもの写真を保存することにしました。ある新生児の面会ノートには、スタッフが撮った顔のアップ写真がいくつか貼られ、シールでデコレーションされ、「かわいい!」とも書いてありました。面会制限の中、やっと会えたわが子とその写真を見て、親はとても喜んでいたそうです。

 何げないひとコマですが、看護師は「何のために面会ノートがあるのだろうか?」と疑問を抱きました。新生児へのケアはもちろん、家族のケアもNICUでは重要なのに、これでよいのか。「面会ノートやSDカードの趣旨を改めて考えた方がよいのではないか」とスタッフに働きかけました。面会ノートとSDカードは、新生児の成長・発達やNICUでの生活を伝える重要な目的があります。

 顔のアップを撮ってはいけないわけではありませんが、親が新生児に会うことができない間、どのように生活していたのか、どのような成長があったのかが伝わる写真やメッセージこそが必要なのです。

再認識される手書きの記録

 面会制限があると、主治医が親と話す時間も限られます。看護師は、ちょっとした会話も大切に、整理し、記録しているそうです。看護記録をつけるときも、親がどう考えているかがわかるように、看護師の言葉ではなく、親の言葉で記載することに再統一しました。

 人と人との接触が回避され、ウェブを通したコミュニケーションが日常的になった今だからこそ、看護現場での手書きによる記録とコミュニケーションの重要性を再認識させられたケースです。(鶴若麻理 聖路加国際大准教授)

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tsuruwaka-mari

鶴若麻理(つるわか・まり)

 聖路加国際大准教授(生命倫理分野)、同大公衆衛生大学院兼任准教授。
 早稲田大人間科学部卒業、同大学院博士課程修了後、同大人間総合研究センター助手、聖路加国際大助教を経て、現職。生命倫理の分野から本人の意向を尊重した保健、医療の選択や決定を実現するための支援や仕組みについて、臨床の人々と協働しながら研究・教育に携わっている。2020年度、聖路加国際大学大学院生命倫理学・看護倫理学コース(修士・博士課程)を開講。編著書に「看護師の倫理調整力 専門看護師の実践に学ぶ」(日本看護協会出版会)、「臨床のジレンマ30事例を解決に導く 看護管理と倫理の考えかた」(学研メディカル秀潤社)、「ナラティヴでみる看護倫理」(南江堂)がある。

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未来人

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小児脳神経外科学の専門雑誌を数年拝読した経験があります、この領域で胎児内治療とかできるようになると、医学的にさらに医療情勢が、何か変わるのではないか?と思ったのは20年前ですが、小児外科とアイ・ピー・エス細胞の領域からも協力を得て、さらなる周産期医学の発展を祈らずにいられません、ヨミドクターで、こうしたトリソミー18疾患を中心にしたテーマを時折挙げてもらっていますが、私の脳裏には前述のように、関連医学学会が一堂にコラボし、体内治療が可能になった未来が見えています。こうした病気は、大かれ少なかれ、見過ごすことが出来ない、発展させなければならないと感じています。がんばってください。

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