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産業医・夏目誠の「ハタラク心を精神分析する」

医療・健康・介護のコラム

優秀な若手社員は会社を見限る……その理由は?

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 長年、企業の産業医や精神科医をしていますが、この15年ほど、20歳代の若手社員の退職が増えているのが気になります。大企業やメーカーでは少ないと言われていましたが、いまや全体的傾向になっています。なぜなのか。産業医として考えざるを得ません。多くの相談事例(8割は私が対象者に面談、2割が人事などの相談)から感じるのは、社風が合わない、何となく明るい会社ではない、体育会系でなじめない、といったことが多いです。こうした企業文化への違和感のほか、仕事内容自体への不満で辞めていくこともあります。優秀な若手社員に多いようです。

 24歳の和田太郎さん(仮名)は、入社2年目の営業企画部社員です。退職を希望しましたが、思いとどまらせたい上司の意向もあり、しぶしぶ相談室を訪れました。

優秀な若手社員は会社を見限る……その理由は?

イラスト 赤田咲子

コピー取りや資料作りばかり

産業医 :産業医の夏目です。よろしく、お願いします。

和田さん :上司に言われて来ました。パッと退職したかったんですが、引き留められました。

産業医 :どうして退職を考えたのですか。

和田さん:入社2年目です。4月になったら、仕事内容が変わると期待していましたが、5月になっても変わりません。

産業医 :具体的にはどういうことでしょうか?

和田さん:辞めていく会社だから言っても仕方がないんだけど、私の仕事と言えば、資料準備とコピーがほとんど。

産業医 :コピーが多い。確か、総合職採用でしたね?

和田さん:そうです。でも、事務作業ばかりで夜9時ごろまでかかることもあります。

産業医 :事務職の女性がいるのでは?

和田さん:いますが、急ぐことが多いので、大部分、我々が。今までの慣習もあるのかなぁ。何で遅くまで、こんな仕事ばかり。(ため息をつきながら)やっていられません。コピーとるために、入社したわけではありませんよ。それに友人の会社はペーパーレスで、ITを活用し会議をしています。この会社は古くて、アホらしい。

産業医 :事務作業が多いのですね。

和田さん:作業ばかり。入社時に「君たちは幹部候補生、グローバル競争の戦力」と言われたんですが、これではスキルが身に付きません。

産業医 :なるほど。

和田さん:感心しないでくださいよ。

産業医 :作業ばかりで、ワークをさせてもらえないという不満ですね。

和田さん:そうです。

仕事には「作業」と「ワーク」がある

産業医 :同じような悩みをよく聞くので、「作業」と「ワーク」を整理してみました。これを見ながら、検討しましょう。

和田さん:(納得しながら)先生、就活では「ワーク」を期待されたのに、入社したけどやらされているのは作業ですよ。

産業医 :(2人で見ながら)以前は、二つの分類は明確ではなかったが、OA化が進んで明確になったんだ。「ワーク」って、営業企画なら営業実績を集め、データーベースにする。そこからトレンドなどを見つけて、分析して戦略を立てる。そういう仕事ですね。

和田さん:そう。それがしたかったんだ。コピーするために、入社したのではありませんよ。

産業医 :なぜ、仕事が資料集めとコピーになるのか。私なりに若手の社員と話し合って考えたよ。会社が建前で言っていることと、現場での仕事との違いかな。現場は従来通りのやり方に疑問を持っていない。習慣になっているからね。

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natsume-prof

夏目誠(なつめ・まこと)
 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会前理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」。ブログ「ストレス点数の夏目」はこちら

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1件 のコメント

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終身雇用崩壊の時代で新人が考えるべきこと

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

本文だけでは詳細は掴み切れませんが、意欲のある優秀な人だと物足りないのかもしれないですね。 一方で、社会や会社は個人の為に存在してくれない難しさ...

本文だけでは詳細は掴み切れませんが、意欲のある優秀な人だと物足りないのかもしれないですね。
一方で、社会や会社は個人の為に存在してくれない難しさもあって、その中で賃金や休暇だけでなく自分の勉強時間や経験を確保する必要があります。
作業とワークの境目をどう判断するかとか、作業の中で他人のワークを覗き見ることをどう捉えるかも大事になります。
昔に比べて技術革新の速度が上がっている変化の速い社会に生きているということは、個人や会社の地位は不安定なものになります。
その中で、下積みの在り方さえ変わる事でしょう。

また、上司のヨイショ発言は8割引きで受け止めて、否定もせずにテキトーに合わす方が良いでしょう。
誰しも、自分に都合のいい労働力が欲しいもので、友人関係と労使関係の違いを理解した方が良いです。
やりがい搾取なんて言葉もありますけど、そもそも、多くの仕事は人がやりたくないものの時間やエネルギーの対価としてお金などの報酬を交換しているものです。
上司も嫌われるのは嫌でしょうし、機嫌よく働いてもらうためにお世辞も必要です。
また、線引きも難しいですが、労働条件などのグレーゾーンはよくある事です。
終身雇用崩壊の時代では撤退のラインを考えて入社するのは大事でしょう。

そして、本文には出てきませんが、長引く不況による閉塞感だけでなく、家庭や学校での教育の在り方や社会構造の在り方も新社会人と会社の関係に影響を与えている可能性はあります。

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