山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
「子どもの手が届かない所」ってどこ? 誤飲を防ぐためにすべきこと
子どもの誤飲を予防する取り組みは、これまで、いろいろと行われてきました。厚生労働省の「事故防止支援サイト」の健診用安全チェックテスト(6か月児以降用、9か月児以降用)を見ると、「タバコや灰皿はいつも赤ちゃんの手の届かない所に置いていますか」、「ボタン形電池や硬貨、ピアスなどの小物を机の上に置いていますか」とたずね、それに対して「はい」か「いいえ」を選択するようになっています。これらの質問に、保護者が「はい」、あるいは「いいえ」と答えたとしても、誤飲が予防できるとは思えません。
事実、乳幼児の誤飲の発生頻度は、ここ30年ほどの間、まったく変わっていません。また、「手の届かない所」と言っても、月齢が進んで立つようになったり、身長が伸びたりすれば、手が届く高さは変わります。「小物」とは、どれくらいの大きさのものを指しているのか、よくわかりません。「机の上」と言っても、高さはまちまちです。「いつも」と言われても、24時間できるはずがありません。そこで、基本的なことを検討してみました。
夫婦2人の家庭には4343個の「物」がある
家庭内には物があふれています。産業技術総合研究所の調査1)によると、30代前半の夫婦2人の家庭で、家の中にある物(食品を除く)を調べると、1118種類、4343個でした。20センチメートル未満の物の種類は930種で全体の83%、個数は3885個で全体の89%を占めていました。キッチンや玄関は物が置かれた密度が高く、キッチンと和室を合わせると、全種類の半分の物がありました。乳幼児が誤飲する大きさの目安である4センチ未満の物は80種類(7%)、511個(12%)でした。子どもがいる家庭では、さらに物の数が多くなります(図1、2)。
図1 家庭内のモノのサイズのリスト(個数)
(夫婦2人の家庭)
図2 モノのサイズのリスト(種類)
(夫婦2人の家庭)
これらのデータから、乳幼児がいる家庭では、家の中で誤飲や窒息に陥る危険性が高いことがわかると思います。
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