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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

「子どもの手が届かない所」ってどこ? 誤飲を防ぐためにすべきこと

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危険な大きさとは

 アメリカでは、クリスマスに贈るおもちゃのプレゼントといっしょにSafety cylinder(安全用筒)、あるいはChoke tester(窒息試験器)と呼ばれる器具を渡して、誤飲を予防する活動が行われていると聞きました。この筒の口径は、1と4分の1インチ(約32ミリ)です。この筒に入る物には誤飲や窒息の危険があります(入らない大きさの物で窒息死した例も)。

 私は、日本の子ども用に同じようなものを作ろうと考えました。当時、朝日大学小児歯科学講座にいらっしゃった田村康夫先生に問いあわせ、日本の小児の開口距離、ならびに 口腔(こうくう) 容積のデータを教えていただきました。3歳児の最大開口距離の平均±SD(標準偏差)は、男子は38.4±2.7ミリ、女子は37.4±3.7ミリでした2)。そこで私は、3歳男子の平均値に近い「39ミリ」を採用することに決めました。

 直径が小さい物でも、長さや幅が大きければ誤飲することはありません。そこで、口の奥行きも含めた口腔の大きさ(3次元的容積)を知るために、レントゲン写真の計測値から口腔容積も算出していただきました。それらのデータをもとに、誤飲や窒息を予防するための器具として、3歳児が口を大きく開けた状態を模した筒を作り、「誤飲チェッカー」と名付けました3)。この中に入るものは、乳幼児の口の中にも入る可能性があるのです。

 同じ目的をもった器具なのですが、アメリカでは32ミリ、ヨーロッパでは45ミリ、日本では39ミリの口径となっていて、疑問に思う人もいると思います。これらの数値は絶対的なものではなく、一つの目安と考えてください。日本の3歳男児の最大開口口径の最大値は45ミリ、平均値は38ミリ、最小値は32ミリとされており、どの値を取り上げるかは考え方の違いです。アメリカは経済優先で、リスクを小さく見積もって製品の規制を緩くしている。ヨーロッパは安全重視で大きく見積もり、製品の規制を厳しくしている。日本は中間を取っていると考えたらいいのかもしれません。

 各市町村が発行する母子健康手帳には、最後のページに「窒息や誤飲の予防」として、穴が開けられているものがあります。この穴の径は、日本人の3歳児の平均値に近い39ミリを採用しています。

 こうした道具がなくても、4センチくらいの径があるものなら何でも使用できます。トイレットペーパーの芯を使ってもいいですし、大人の親指と人差し指で輪を作り、直径がおおよそ4センチになる位置を覚えておけば、どこでもチェックすることができます。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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