文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直

医療・健康・介護のコラム

多目的トイレ前の惨劇…父は手で受け、弟は走った

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

誰でも使えるけれど

 出てきた母子に、お父さんが怒っているので申し訳なかった。多目的トイレでなければ用を足せないわけでもなさそうだったが、小さい子がいて女子トイレの行列に並ぶのがつらかったのだろう。多目的トイレは、必要があれば誰でも使える。ただ、必要とする度合いは人によって様々で、「使えると助かる」人から、「ここでしかできない」人までいる。洋介はその中間あたりだと思っていて、場所としては必要だが、特別な装備(手すりやオストメイト※用の設備など)を使うことはない。僕ら自身もそうだが、「自分たちよりもっと多目的トイレを必要としている人が次にくるかもしれない」と意識して、できるだけ時間をかけないですませたい。障害者用の駐車スペースにも言えるが、「いつも空いていて意味がない」のではなく、使う人にとっては「空いていないと意味がない」のだ。

 ※人工肛門保有者・人工 (ぼう)(こう) 保有者

かつてはひどかったトイレ事情

id=20200624-027-OYTEI50002,rev=2,headline=false,link=true,float=left,lineFeed=true

かつてはこんなトイレもあった

 ちょうどその頃、多目的トイレをテーマに取材をしたことがあった。大手メーカーの展示場には最新の素晴らしい設備が並んでいた。しかし、街中にはまだまだ普及していなかったし、従来からあった障害者用トイレは、目を疑うような劣悪な設備であることも少なくなかった。

 例えば、扉は手動の引き戸なのだが、ひどく傾いているために開けてもすぐ閉じてしまう。素早く動ける人でないと入れないし、車いすではまず無理だ。手すりの上をトイレットペーパー置き場にしていたり、自動ドアの内側の開閉ボタン前に備品が置かれていて、車いすの位置からでは手が届かなかったり(入れても、出られなくなる)。

「不適切な使い方」は今も? 大事なのは想像力

 使い方にも問題が多かった。福岡の球場近くに造られた商業施設には、充実した多目的トイレが設置されていたが、その洗面台には、つけまつ毛がいくつも落ちていた。高校生が私服に着替えたり、お化粧をしたりするのだそうだ。当然ながら、長時間占拠することになる。

 若者のマナーが特に悪いわけでもない。いつも、会社でエレベーターの「閉」ボタンを押して外に降りる習慣があるサラリーマン。次に乗る人がいる階へエレベーターが早く着くように、という気配りなのだが、多目的トイレでも同じことをしてしまう「うっかりさん」もいる。その後どうなるかは、想像できるだろう。そう、大事なのはいつでも「想像力」なのだ。

 ただし、それも一昔前の話。今の多目的トイレは設備もマナーも進歩してきているに違いない。と思っていたら、最近は、「不適切な使い方」のせいで警備員が立ったトイレもあるようで……。(梅崎正直 ヨミドクター編集長)

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

umezaki_masanao_prof

梅崎正直(うめざき・まさなお)

ヨミドクター編集長
 1966年、北九州市生まれ。90年入社。その年、信州大学病院で始まった生体肝移植手術の取材を担当。95年、週刊読売編集部に移り、13年にわたって雑誌編集に携わった。社会保障部、生活教育部(大阪本社)などを経て、2017年からヨミドクター。

アラサー目前! 自閉症の息子と父の備忘録 梅崎正直の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事