文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

がんを語る

医療・健康・介護のコラム

AYA世代のがん(下) 家族や職場の友人らに支えられ 次の世代に闘病経験を伝えたい

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

次世代の子どもたちのために

――そんな中で闘病の支えになったものは何でしょうか。

川元  家族や友人、会社のメンバー、担当の先生方など、周りの方々が笑顔で支えてくれました。周囲の人から、私は恵まれているとよく言われます。私は会社で初めてのがんサバイバーなんです。会社の直属の上司である社長は外資系の会社の経験も豊富な人で、迷惑がかかるから、退職したいと伝えた際も「前例がないなら、作ればいい。人が経験できない貴重な経験をしているから、完治したらその経験を将来仕事に生かせばいい」と励ましてくれました。新しいプロジェクトにも携わらせていただき、つらい治療も仕事に集中することで紛らわせることができました。フルフレックスを活用し、リモートワークでは私専用のチャットを作ってくれるなど、会社もいろいろと気遣ってくれました。会社の同僚や友人たちも、元気でいつも笑顔の私ががんになったということを信じられなかったみたいで、最初はどう接したらよいか悩んだと後で聞きました。私が落ち込まないようにと会社や食事に連れ出してくれたり、治療が終わったら旅行や遊びに行こうと計画を立ててくれたり、皆忙しいはずなのに、時間を作ってくれ、たくさんの人が会いにきてくれました。

 がん患者を支援している美容師さんがウィッグを切ってくれている際には、外国では「コングラチュレーション(おめでとう)」って祝福されると教えてもらいました。家族の支えももちろんで、たとえば弟は、抗がん剤で髪の毛が抜けた私のためにニット帽を3個も買ってきてくれました。弟からプレゼントをもらったのは初めてです。また、何より担当の医師や看護師さんをはじめ医療関係者の方々が一生懸命頑張ってくださっている、なので自分が頑張らないわけにはいかないと、心が折れそうな時も正直何度もありましたが、たくさんの方の支えがあったから頑張れたと思います。

――中村さんはご自身でNPOをつくって不登校児たちを支える活動を始められたんですね。

中村  学校現場で働いたときに、今の不登校児は学校だけでは救えないと感じていたのがきっかけです。日本人全体の自殺率は下がってるんですが、子どもの自殺率はどんどん上がってる状況なんです。今実際に、そういうお子さんの家に直接伺って支援する取り組みをしています。伝えているのは「生きることが大事」「生きてさえいれば、いいんだよ。学校なんか別に行かなくても大丈夫」ということです。それを親もわかってくれれば、子どもも楽になると思います。

 自分が病気になって、今こうやって生きて生活できているということが、今の仕事につながっているのだと思います。私も子どもが大好きで、苦しんでいる子どもを助けたいという気持ちが強くあります。退院後、現実からの逃避行というか、オーストラリアに留学しました。抗がん剤の副作用で全身にあざのようなものができたんですけど、海で服を脱いで遊んでいた時も「ナチュラルタトゥーだね」なんて言われて、フレンドリーに接してくれ、うれしかった思い出があります。海外はそういうところがあるのかな、と感じますね。

――瀬尾さんは友人関係が少ないとおっしゃってましたが、患者会はどんなきっかけでしたのですか。

瀬尾  退院してからも腰の痛みが残って、ほぼ出歩けないような状態で、会社にも行けないでいた中で、いくつか、がん患者の会合をのぞいてみました。自分の病状の変化とともに、会とのつきあい方にも変化があります。自分の体調が全体的に安定してきて、仕事もそれなりにできるようになると、今思うように行かずに悩んでいらっしゃる方にとって、逆にプレッシャーになってはいけないというふうにも考えて、患者会とはちょっと距離を置くようなとか、つきあい方も変わってきますね。

――渋谷さんはブログやSNSでも闘病について発信されていますね。

渋谷  私の場合は患者が少ないがんなので、患者会に行っても同じがんの人には会えないだろうなっていう気持ちがあり、最初はそういった会に行くことはありませんでした。参加するようになったきっかけは、ツイッターで交流のある方から「STAND UP!!」の年末の総会に誘っていただいたことです。がんの種類は違っても、同年代のがん患者の方と初めて交流をもつことができて、悩みも同じ年代だと結構共通していることもあり、オフ会などにも顔を出すようになりました。

医師と患者のコミュニケーションを

――医療や社会のあり方なども含めて、おっしゃりたいことがあれば自由にご発言ください。

川元  最初の頃は、自分をがん患者と認めたくない気持ちが強くて、患者会の存在は知っていたのですが足を向けませんでした。けれど実際に同じ若年性のがん患者さんに会って話をすると明るくて、元気で夢を持ってて頑張っている姿に勇気づけられました。抗がん剤の副作用のために、一時はつえがないと歩けない状態だったのですが、今はがん経験者と信じてもらえないほど、パワフルと言われています。「STAND UP!!」にも参加していますが、がん患者と言われなければ、みんな普通の若者なんです。私はすごく勇気をいただきましたし、知らない方もぜひ参加していただければと思います。

 社会や医療に関しては、医師の方に、ぜひ患者とコミュニケーションをとっていただき、患者も医師に治療方針を任せっぱなしにするのではなく、自分なりに考え、質問して、納得して治療を受けることが、双方にとって良い関係につながると思います。私は担当の先生方に安心して命を預けることができると、心から信頼していました。理由は先生方がきちんと毎回説明をしてくれ、どんなに忙しくてもコミュニケーションをきちんととってくれたからです。世間的には「がんイコール死」というイメージがまだ強いです。しかし、医療の発展はとても速く、がんになっても元気になれます。新型コロナとの新たな共存が求められているように、がんとも共存する社会へと、差別を受けない世界に変わっていけばと考えています。

瀬尾  自分の場合は最初の治療方針に納得ができず、転院して治療を受けました。その中で思ったのが、何か医療って特別視されすぎているのではないかということです。医学部に行って医師になった友人もいますが、医師に向いているかどうかより、高校で成績が良かった人間が医師になっているわけで、医師だからと言って何か特別な存在というのとは、違うと感じています。例えばレストランでおいしくなかったら、二度と行かないだろうに、病院だと、患者側が思いを言えずにそのままになってしまう現状があります。医師との関係をもっとフラットに考えて、セカンドオピニオンとか転院といった選択肢もあっていいと思います。

2 / 3

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

がんを語る3-thum

がんを語る
男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
※記事内容や写真を他のメディアに無断引用することはお控えください。

がんを語るの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事