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がんを語る

医療・健康・介護のコラム

AYA世代のがん(上) 若年性の患者が語る 告知、治療、そして仕事、恋愛、家族への思い

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 「がんを語る」第7回のテーマはAYA世代のがんです。今回は、若年性がんの患者団体「STAND UP!!」のご協力を得て参加を呼びかけ、4人の患者さんと初めてのオンライン会議システムを結んで開催しました。参加者はいずれも20~30歳代で、がんの種類もそれぞれ違います。診断、治療や告知を受けた時の思い、仕事や恋愛、将来の夢などについて語ってもらいました。

AYA世代のがん  AYA(アヤ)とは「Adolescent and Young Adult」の略。思春期から若年の成人のことで、主に15歳から39歳のがんを指す。全国がん登録(2017年)によると、全国で1年間に新たに発症する患者は2万1000人あまり。年齢によるがんの種類の特徴が一般的な成人のがんとは異なることに加え、若い世代ならではの学校や仕事、結婚、出産などの悩みも大きいことなどの課題が指摘されている。

AYA世代のがん(上) 若年性の患者が語る 告知、治療、そして仕事、恋愛、家族への思い

参加者 (敬称略)

AYA世代のがん(上) 若年性の患者が語る 告知、治療、そして仕事、恋愛、家族への思い

卵子、精子の凍結保存に悩み

――まず、それぞれのがんの種類や経過などについて教えてください。

川元  2019年の4月に、右胸に偶然、しこりを見つけたのがきっかけです。翌月、30歳10か月の時に浸潤性乳管がんのステージ1と診断されました。6月から術前抗がん剤治療16クールを半年間した後、12月に乳房温存手術を受け、25回の放射線治療を今年2月に終えて、現在は3か月に1回の経過観察中です。若年性に多いトリプルネガティブというタイプで、手術後にリンパ節転移のないステージ2Aと確定しました。抗がん剤がよく効いたおかげで手術前にがんが消え(術前完全奏功)、予後の見通しがよくなったということで、今は安心して過ごしています。

 将来の妊娠を希望していたので、抗がん剤治療の前に妊孕(にんよう)性温存に一度だけ挑戦しましたが、うまくいかず、自分の体を信じたいと治療を優先しました。仕事はコンサルタント会社に勤めています。抗がん剤治療も通院だったため、告知後から現在までリモートワークとフルフレックスを織り交ぜたフルタイム勤務を続けています。

渋谷  19年の冬から春頃にかけて体調を崩し、最初は逆流性食道炎と診断されるなど、3か月ぐらい病院を転々としました。症状は悪化するばかりで、救急搬送されて受けた検査によって、血液中のカルシウム値が異常に高い高カルシウム血症だとわかりました。精密検査で右の腎臓に大きな腫瘍があるのが見つかり、右の腎臓を切除しました。病理検査の結果、悪性ラブドイド腫瘍ということがわかりました。2~3歳の子どもに発症することが多い希少がんです。

 卵子凍結については、提携している病院に行って説明は聞いたのですが、費用やかかる時間も考えて、がん治療の方を優先しました。入院して半年間、抗がん剤治療を受け、昨年の10月に終えたところです。勤めていた会社はやめて、今は実家の焼き菓子店の店員として働いています。

瀬尾  私は多発性骨髄腫というがんです。最初は腰の痛みで整形外科に通っていたのですが、痛み止めを飲んでもひどくなるばかりでした。寝たきりのような状態になって救急車で運ばれ、血液検査の結果、内科を紹介され、大学病院へ移るといった経過をたどりました。診断がついたのは18年の年末ぐらいです。この病気は40代でも若い方で、私のような20代の患者はほぼいないそうです。専門の医師のいる病院に移って、現在も2週間に1度通院して抗がん剤治療を受けています。

 検査の数値は落ち着いているのですが、いまのところ完治は難しく、寛解状態から再発までの期間をどれだけ延ばすかが重要になる病気のようです。主治医は、今後新たな治療薬などの開発も含め、完治できるようにしたいと言っています。自分の血液を保存して移植する自家移植の準備もしています。仕事はIT企業に勤めています。半年ぐらい休職をした後、スキルアップしたい希望もあって今の会社に転職しました。

中村  27歳だった2年前の6月に精巣腫瘍が見つかり、片方の精巣を切除しました。転移していることもわかったので、7月に入院して抗がん剤治療を受けました。退院したのは11月です。将来、結婚して子どもをつくることも考え、精子の凍結をして保存しました。ただ、がんができた場所が悪かったらしく、精子があまり作られずに量が減った状態だったため、将来、凍結精子を使って子どもができる可能性は少ないかもしれないと医師から説明を受けています。

 仕事は、教育現場で働いていたのですが、がんを機にやめて、友人と3人で不登校の支援のためのNPOを設立しました。恋愛とか結婚については、やはり子どもができない可能性があるということで、ちょっとおっくうになる部分があります。

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がんを語る3-thum

がんを語る
男性の3人に2人、女性の2人に1人が、がんになる時代です。このコーナーでは、がん種別に患者や経験者を招き、病との向き合い方を話し合います。
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