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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

スポーツの再開において、気を付けてほしいこと

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が全面的に解除され、プロ野球は6月19日に約3か月遅れで開幕しました。また、サッカーのJ1リーグは7月4日から開催します。しかし、新型コロナウイルス感染症が完全に終息したわけではなく、プロ野球は当面、無観客で試合が行われます。また、地域にもよりますが、一般の方のスポーツ活動も少しずつ再開しているのではないでしょうか。しかし、感染対策を行いながらのスポーツ活動の再開については、どこまで何をやってよいのか、戸惑う人も多いのではないかと思います。

 今回は小学生ラグビーチームのケースです。

 Bさんは小学校のラグビーチームのコーチです。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い3月以降練習を中止としていました。4月から、オンラインによる自宅で可能なエクササイズを中心とした練習を行いました。緊急事態宣言が全面的に解除され、グラウンドでの練習をどう再開するか、コーチ陣でオンラインミーティングを開催しています。

スポーツ再開には、正解はない

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療はひっ迫しましたが、爆発的な患者の増加には至らず、新しい生活スタイルの日常に落ち着きつつあります。しかし、自粛が必要とされる感染症の拡大は、現代を生きる私たちにとって初めての経験です。この状態からどのようにスポーツ活動を再開すればよいのか、その正解を明示できる人はいません。リスクをゼロにするのであれば、スポーツをしなければいいという極論になりますが、それはナンセンスです。学校も経済活動も、ゼロリスクを求めるといつまでも再開できません。リスクがゼロではないことを許容した上で、現在示されている科学的な見解や専門家の意見、それらを反映した官公庁や各種競技団体のガイドラインを参考にしながら、段階的に活動を再開することが重要です。

 自粛で身体機能は低下しているので、急な運動再開によるけがを防ぐこと、それに万が一、選手に感染が生じた場合でも、ほかの選手への拡大を可能な限り抑えるという、二つの観点が必要です。そのためにも、チームで十分に話し合い、プレーヤーおよびその家族に方針を了承してもらう必要があります。

 活動は段階的に進める必要があります。

スポーツの再開において、気を付けてほしいこと

(スポーツ医学検定・HPより)

 それでは、Bさんのチームの経過です。

 練習の再開にあたり、独自の感染症対策を決定しました。毎朝の体温チェックと健康チェックを徹底し、発熱、 (せき) 、のどの痛みがある場合は練習に参加しないなどの参加条件を決めました。まず、熱中症も考慮して、マスクは着用しないこととしました。人と人が2メートルの距離を取り、接触することがない練習から再開し、タオルやウォーターボトルの共用は避けます。活動は段階的に、アクティブな方向へと上げる方針で、コンタクトプレーは状況を見て7月以降で考えています。

情報のアップデートを

 スポーツの再開プログラムに正解はなく、スポーツ種目や住んでいる地域によって、その目安は異なるでしょう。また、今後の感染の状況によって柔軟に対応する必要があります。官公庁や各競技団体が出しているガイドラインは、ぜひ参考にしてください。また、私たちスポーツ医学検定では、それらの情報を一般の方でも理解しやすいよう、資料にまとめ、HPやアプリで発信しています。

 アプリでは簡単なクイズを約10問つけており、全問正解すれば受講証が出ますので、ぜひ活用してください(アプリの登録や新型コロナウイルス感染症のコンテンツは無料です)。

スポーツの再開において、気を付けてほしいこと

(スポーツ医学検定・HPより)

 まだ、不明なことが多い新型コロナウイルス感染症ですので、我々も資料作成においては、<1>作成した日付を明記する、<2>根拠となる資料を示す、<3>情報を更新する、の三つを大切にしています。皆さんもインターネットで得られる情報は、いつ、誰が書いた情報で、その情報の根拠は何なのか、注意して読むようにしてくださいね。

 スポーツの持つ力が、また多くの方の人生に彩りを与えてくれることを祈念します。(大関信武 整形外科医)

【スポーツ医学検定のご案内】
 私たちは、スポーツに関わる人に体やけがについての正しい知識を広めて、スポーツによるけがを減らすために、「スポーツ医学検定」を実施しています。スポーツ選手のみでなく、指導者や保護者の方も受けてみませんか(誰でも受検できます)。

 5月に開催予定だった第7回スポーツ医学検定は新型コロナウイルス感染症拡大のため、中止としました。お申し込みをされた皆さまには、大変ご迷惑をおかけしました。振替受検については改めて案内を差し上げます。また、ホームページやSNSでも案内します。第8回スポーツ医学検定は11月の開催予定です。本文のイラストや写真の一部は、「スポーツ医学検定公式テキスト」(東洋館出版社)より引用しています。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、読売巨人軍チームドクター、日本スポーツ医学検定機構代表理事、日本スポーツ協会公認スポーツドクター

 1976年大阪府生まれ、2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学勤務。野球、空手、ラグビーを経験。スポーツ指導者などへのスポーツ医学知識の普及を目指して「スポーツ医学検定」(春、秋)を運営している。東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。

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1件 のコメント

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ヒトとモノを動かすスポーツ

寺田次郎 関西医大放射線科不名誉享受

地域なり組織なりの再開になるのは否めませんが、むしろ、プロスポーツより学生スポーツの方が個々人の人生における意味は大きいのではないかと思います。...

地域なり組織なりの再開になるのは否めませんが、むしろ、プロスポーツより学生スポーツの方が個々人の人生における意味は大きいのではないかと思います。
新型コロナは大きな要因ですが、身体活動や社会活動の停止や制限もまた人生においてマイナスのファクターだからです。

難しいのは、何が適切かどうかの判断の基準がいくつもあり、多くの人は身近な人の目に見える結果と報道の内容しか理解し共感することができないことです。

いずれにしても、スポーツという、産業における直接生産性のない行為は、多くの人間にとって生命維持や人生の彩に重要な「無駄」なのは間違いありません。
そして、そこで得られた心身の健康が長い目で見て産業や人間社会に還流することは間違いない事ではないかと思います。

不況のニュースもいくつも見受けられますが、不況の要素における停滞や偏りの要素をいくつかでも動かすのはスポーツだと信じます。
一部の人を除いて、みんなお金や物が欲しい状況ですが、お金や物は情報や人と共に動きます。
スポーツそのものだけでなく、周辺産業にまで目を向けることで、新型コロナの被害を多少なりとも減らしていけるのではないかと思います。

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