文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

解説・企画

医療・健康・介護のニュース・解説

感染症に強い社会築け、安心取り戻す医療・経済…読売新聞社提言

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
感染症に強い社会築け、安心取り戻す医療・経済…読売新聞社提言

 世界を不意打ちした新型コロナウイルスは、日本で900人を超える死者を出し、経済・社会活動を様々な形で止めた。国民の間に大きな不安を広げている。私たちは、これまで盲点となっていた感染症というリスクとしっかりと向き合わなければならない。読売新聞社は、感染症に強い社会を築くための処方箋として、7項目の緊急提言をまとめた。

 戦後間もない日本は、感染症との闘いの日々だった。厚生白書で、結核を「わが国の国民病」とうたったのは昭和31年(1956年)のことだ。健康診断や特効薬による治療、予防接種、衛生環境の向上など矢継ぎ早にとった政策は、結核だけでなく、赤痢やジフテリア、ポリオなどを次々に制圧することに成功した。わずか10年後の白書は感染症について、「近い将来われわれの周囲から消滅するすう勢にある」と宣言した。医療の主眼は、がんなど生活習慣病に移った。

 それから半世紀。世界でも指折りの「衛生社会」を実現した結果、私たちは感染症への備えをおろそかにしたのではないだろうか。平成の30年間、全国の保健所の数はほぼ半減し、新型コロナ対応で保健所の現場は多忙な業務に追われた。

 我が国は新型コロナの感染爆発をひとまず回避した。安心するのはまだ早い。スペイン風邪は、1918年から計3波にわたり、国内で大流行した。いつ第2波が国内を襲ってもおかしくない。

 国家の非常事態には、政府が前面に立って総合的な戦略を示し、対処すべきだ。地方任せでは、対策は徹底を欠くことになる。医療体制は大丈夫か。経済や雇用、家計はどうなるのか。何よりも、どう「新たな日常」生活を送ったらいいのか。国民に募る不安を取り除き、安心して暮らせる環境を整えることが求められる。

 国と地方が力を合わせ、危機に強い医療体制を築く時だ。「医療崩壊」を防ぐには、流行時を想定した都道府県の病床確保計画が欠かせない。 蔓延まんえん 期に、医療機関だけで感染者を受け入れるのは不可能だ。重症者や中等症患者を収容する医療機関を事前に指定し、軽症者や無症状者向けの宿泊施設もあらかじめ割り振る必要がある。

 日本は、PCR検査能力が欧米各国に比べて著しく低い。第1波ではすぐに検査を受けられない人が相次ぎ、混乱を招いた。1日10万件の検査体制を構築すべきだ。抗原、抗体各検査を含め様々な検査を受けられるようにすべきだ。マスクや防護服などを中国に依存していたため、国内の需給が 逼迫ひっぱく した。サプライチェーン(供給網)の見直しで製造拠点の国内回帰を促したい。

 企業活動の先行きは不透明となり、雇用不安も広がっている。政府は、支援ファンドを活用した企業への資本注入などで国内経済を下支えすべきだ。

 10万円の一律給付は、国民の手に届くまで時間がかかっている。マイナンバー法改正で、マイナンバーを振込先の口座とひも付ければ、迅速に給付できる。

  ◆スペイン風邪  1918年に米国で発生が確認され、20年頃まで世界的に流行したインフルエンザ。国内の流行は、第1波が18年8月~19年7月、第2波が19年10月~20年7月、第3波が20年8月~21年7月。当時の人口約5700万人のうち、患者数は約2380万人、死者は約39万人に上った。

 

国主導の体制を早急に

 

 感染症対策は、国を挙げた危機管理でもある。感染症担当相を常設ポストとして、内閣官房に強力な事務局を置き、補佐する体制が欠かせない。事務局トップに感染症対策危機管理監(仮称)を置き、政府の取り組みを国民に丁寧に説明するべきだ。

 休業要請の対象業種や時期をめぐって政府と東京都の方針が食い違い、調整が難航した。休業の要請や解除は社会活動への影響が大きく、経済圏として一体的に対応することが望ましい。都道府県に単独で判断させず、政府が主導して調整する仕組みを取り入れたらどうか。その代わり、政府は手厚い財政支援を講じ、事業者が安心して休業要請に協力できるようにする。

 新型コロナのあおりで、全国の小中高校が一斉休校を余儀なくされた。長期休校でも学びの機会を確保できるよう、学校と家庭を結ぶオンライン教育環境を早急に整えたい。

 人やモノの動きが国境を軽々と飛び越えるグローバル社会にあって、感染症が世界を席巻する速さも過去とは比べものにならない。感染症との闘いに、国際協調の視点は不可欠だ。米国と中国の対立を受け、トランプ米大統領は世界保健機関(WHO)から脱退する意向を表明した。日本は欧州連合(EU)などと足並みをそろえ、国際協調の機運を取り戻せるよう努力すべきだ。

 医療従事者や感染者らへの中傷や差別が相次いでおり、社会全体でコロナに立ち向かう意識を共有したい。

      ◇

 提言にあたっては、編集局や調査研究本部、論説委員会の専門記者が検討を重ね、有識者へのインタビューも踏まえ策定した。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

解説・企画の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事