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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

まぶしさ(羞明)に苦しむ患者の実態調査が実現…厚労省推進事業

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まぶしさ(羞明)に苦しむ患者の実態調査が実現…厚労省推進事業

 「まぶしい状態」を専門用語では「 羞明(しゅうめい) 」といいます。

 瞳孔(ひとみ)は明暗に反応して小さくなったり、大きくなったりします。カメラの絞りの役割です。何らかの原因でその反射機能が働かなくなり、たとえば瞳が開いて(散瞳して)絞りが開いたまま固定しますと、まぶしさを感じます。

 また、白内障や、角膜や網膜の病気など眼球の異変があっても、光が苦手、光を避けたいという反応が出ることはよくあります。

 このように、羞明は主に目の異変として従来取り扱われてきました。

 ところが、目に異常はないのに、高度な羞明を持つことがあります。

 中枢性羞明――まだ公認された医学用語にはなっていませんが、目ではなく脳の機能の異変で羞明が生じることがあることを、一部の臨床医は以前から気づいていました。

 羞明とひとことで言っても、明るさに対して敏感な場合でも、部屋の中ではよいが、外へ出るとまぶしさが増強するケース、逆に自然光は大丈夫だが、屋内の蛍光灯やLEDの光に反応してしまう場合など性質や強さはまちまちです。

 暗いところでもまぶしさを感じる方もいます。寝室で電化製品の黄色や赤色の表示灯が気になって避けたいという方です。

 高度の羞明を持つ人に比較的共通な医学的特徴は、「注視努力の企図や遂行で症状が出現、悪化する」という点です。例えば、パソコンやスマホを見続けるとまぶしさや痛みが生じ、それを我慢してなおも続けると頭痛、吐き気、めまいなど身体症状も出て、なかなか回復しなくなるのです。

 こうした症例があることを、我々臨床医はほとんど注目せずにきました。眼科医は眼球に異常がないので、そんなことはあり得ないと思っていました。神経内科や精神神経科の医師は薬の一過性副作用や精神疾患の部分症状としてしか「羞明」を扱わず、正面から取り組むことはありませんでした。

 私は、20年ほど前から「 眼瞼(がんけん) けいれん」という、脳の誤作動で生じる、目を自在に開けることができない病気で、「まぶしい」「痛い」という訴えが非常に多いことに気づいていました。また典型的な眼瞼けいれんではなくても、常時まぶしさや目の痛みに悩まされている例が少なくないことにも気づきました。そうした方の大半は視力や視野検査では異常が出ないので、「眼球使用困難症候群」と総称していました。

 こうしたケースの中には、仕事を続けられない、人の手を借りないと移動できないといった方々もいて、生活上は明らかな視覚障害者なのに、視力や視野だけで評価される現行法では視覚障害と認定されないのです。

 ようやく患者たちの声が厚労省に届いたのでしょう。厚生労働省の令和2年度(2020年度)障害者総合福祉推進事業の中に「羞明等の症状により日常生活に困難を来している方々に対する調査研究」が指定課題に採用され、実態調査が行われることになりました。大きな進歩です。筆者も微力ながら調査研究に協力したいと思っています。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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