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夫と腎臓とわたし~夫婦間腎移植を選んだ二人の物語 もろずみ・はるか

医療・健康・介護のコラム

生きるには「透析しかない」と思い込んでいた私 患者が治療法を選べる情報提供を

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 6月、移植外来に出かけがてら病院周辺を散歩していると、医学書専門の小さな書店を見つけた。店に入ると、「名医ランキング」なる本が目にとまる。あっ、知ったお顔が。それは、私がお世話になっている東京女子医科大学病院の院長先生だ。腎移植を行う泌尿器科の名医として誌面で紹介されていた。東京女子医科大学病院は、日本でトップクラスの腎移植実績件数を持つ。「立派な病院で手術できてよかったね。もろちゃんは運がいい」と周囲からよく言われるし、自分でも本当にそう思う。もし、この病院と出会えていなかったら、おそらく私は腎移植をしていなかっただろう。

病院選びの基準は「自宅から徒歩圏内」だった

 私は、保守的な人間だ。革新的なことは怖くて苦手だし、変化をひどく恐れる傾向がある。そんな私が、年間1600件程度しか行われていない腎移植という治療法を受けられたのは、奇跡だと思う。

 東京女子医科大学病院に通うこととなったきっかけは、まったくの偶然。結婚して構えた新居から徒歩圏内にあったからだ。慢性腎臓病は、一度悪くすると生涯治らない。この病院であれば、透析の設備も完備されているので、一生のお付き合いができると考えたのだ。それと、できれば子を授かりたいという思いがあったため、「腎臓病患者の妊娠」に詳しい同病院の腎臓内科医にもお世話になった。

 お恥ずかしい限りだが、当時の私は、東京女子医科大学病院で腎移植が行われていることすら知らなかった。それどころか、ドナーが見つかれば「誰もが移植を受けられる(それも医療費には助成制度がある)」ということすら知らなかった。

誰も「腎移植」を教えてくれなかった

 というのも、それまでの私は、「腎臓が悪くなれば透析をするしかない」と信じて疑わなかった。私の勉強不足とはいえ、大きな病院を転々としたにもかかわらず、腎移植について教えてくれる医師が一人もいなかったのは事実だ。医師としては、「まだ話す時期ではない」と判断したのかもしれない。私の腎機能が末期状態になったのは、ここ数年のことだから。

 あるいは、ドナー不足という現実があったためかもしれない。現在、臓器移植希望者は約1万4000人いる。そのうちの2~3%程度の人しか移植できないのが実態だ。ただし、腎移植に関して言えば、現在行われている移植のうちの9割は、健康な人から臓器提供を受ける生体腎移植だ。死体からの移植はドナー不足でも、健康なドナー提供者が身内にいれば、腎移植の可能性はある。そうしたことを、予備知識としてでも教えておいてくれてもよかったのに、とは思う。

 ちなみに現在では、透析以外に移植という選択肢があることを、患者に説明する腎臓内科医が増えているそうだ。日本腎臓学会の専門医研修にも、移植に関する知識が取り入れられているという。

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もろずみ・はるか

医療コラムニスト
 1980年、福岡県生まれ。広告制作会社を経て2010年に独立。ブックライターとしても活動し、編集協力した書籍に『成約率98%の秘訣』(かんき出版)、『バカ力』(ポプラ社)など。中学1年生の時に慢性腎臓病を発症。18年3月、夫の腎臓を移植する手術を受けた。

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